また特捜部が賄賂の見返りと位置付ける文科省の「私立大学研究ブランディング事業」は、3月から6月まで公募を受け付け、10月までに文科省が大学を選ぶことになっている。その大学選定については、私大の理事や学長など11人の「私立大学研究ブランディング事業委員会」と26人の教授たちからなる「審査部会」が個別の研究計画を採点し、決定する仕組みだ。表向き、第三者の審議会が補助金を与える大学を選定する建前になっている。
そこで事件当時官房長だった佐野は、「大学選定の権限もないし、タッチもしていない」と容疑を否認。
「これに対し特捜部は、佐野がコンサルタントの谷口を通じ、事業に応募する際の申請書類の書き方を指南したとみて、捜査を進めています。その上で、第三者の審議会への働きかけがあったかどうか、そこを詰めていく」(司法関係者)
東京医大は、ブランディング事業の初年度にあたる2016年度にも応募したが、落選していた。そこで翌2017年度に再挑戦し、佐野たちのアドバイスを受けて見事合格したのである。
そこは大学側が認めているので明らかだ。すると当の佐野自身は特捜部の調べに対し、「あくまで個人的にアドバイスしただけ」と半ば認めた。だがその一方で、大学選びは第三者機関の決定であり、官房長には制度上の職務権限がない、と徹底抗戦の構えを崩さない。裏口入学についても知らなかったと頑なだが、問題は誰が第三者委員会に影響力を行使したか、である。