加計学園の2校が応募した初年度のブランディング事業の大学選びは、まさにそんな渦中におこなわれていたのである。研究テーマは、千葉科学大の「『フィッシュ・ファクトリー』システムの開発及び『大学発ブランド水産種』の生産」と岡山理大の「恐竜研究の国際的な拠点形成―モンゴル科学アカデミーとの協定に基づくブランディング」だ。首相の腹心の友が経営する学校法人は、大学改革の一環であるブランディング事業で極めて狭き門をすり抜け、さらに国家戦略特区の獣医学部新設へ向けてレールに乗ってことを進めていった。
加計学園で、獣医学部の新設を進めてきたのは中核大学の岡山理大だが、もう一つの千葉科学大でも千葉県の銚子市に開学準備を進めていた2002年当時、「獣医水産学部」の新設を計画していた。それは断念せざるを得なくなるが、前述したように2016年のブランディング事業では、水産分野を研究テーマとして応募し、予算3752万円の補助金を勝ち取った。
むろんどれも加計学園の獣医学部新設が、騒動になる前のことだ。拙著『悪だくみ「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(文藝春秋)にも書いたが、その千葉科学大でも、あわよくば今治市の獣医学部に続き、水産系の獣医学部の開校を目論んでいた。2015年から2016年にかけた加計学園をめぐるこれらの動きが、偶然の産物だとはとうてい思えない。
特捜部に逮捕された佐野は高等教育局私学部参事官として私大を担当し、官房長に就任したあとは予算にもタッチし、安倍政権との調整役を担ってきた。否応なく国家戦略特区問題にかかわらざるを得ない立場だ。“裏口入学”と酷評された国家戦略特区の獣医学部新設に倣い、無理やり我が子を医大に入れようとした──。まさかそんなわけはあるまいが。
※週刊ポスト2018年8月3日号