逮捕された佐野太・前文科省局長(時事通信フォト)
だが、その実、特捜部にはもっと根深い別の狙いがあるのかもしれない。それは決して深読みに過ぎるわけでもない。事件には官邸と霞が関の暗闘に通じる背景がある。
地検特捜部が受託収賄の見返りと位置づける私大のブランディング事業は、2016年からスタートした。その第一弾として、全国の私大198校が手を挙げ、うち40校が選ばれた。実に競争率5倍の難関だ。
そんな栄えある第一号の私立大学の中で、目を引くのが千葉科学大学と岡山理科大学である。どちらも学校法人加計学園の経営する大学だった。
奇しくも事業選定が始まった2016年6月、前川喜平が文科省の事務次官に就任した。次官になった前川が首相補佐官の和泉洋人をはじめ、官邸サイドから加計学園の進める獣医学部新設計画に賛同するよう、さまざまな圧力をかけられていた時期とピタリと重なるのである。
そしてこのとき、目下、受託収賄の罪に問われている佐野本人もまた、統括審議官から官房長に昇進した。官房長は国会対応をはじめ、文科省内と政権中枢との調整役を果たす。まさにそんな微妙なタイミングで、加計学園が文科省の補助金給付対象事業の私大に選ばれているのである。