定年後は、じっくりシミュレーションを重ね、銘柄選びを考える時間的余裕もある。それゆえ外山氏はむしろ「年老いたからこそ投資に挑戦すべき」と考えているのだ。
「別に、たくさんのお金を投資に回す必要はないんです。僕が勧める最大の理由は、人生を最後まで楽しめるからですよ」
その上で外山氏は「投資の元手として借金をしない」「値下がりした場合に追証を求められる信用取引にも手を出さない」といった注意点を付け加えた。
「誰かの言うことを聞くのではなく、自分の頭で考える」──外山氏は終始、“知識”より“思考”を大切にすることを強調した。
その言葉は、「100歳まで生きるのが当たり前」という新たな時代がやってきて、これまでの“マニュアル”が役に立たなくなるからこそ、傾聴に値するものだと言えるだろう。
高齢者はリスクが大きい個別株投資などに手を出すべきではない──そんな“常識”を鵜呑みにすることは「思考停止」に他ならない。そして、同様のことは働き方や生活様式、家計管理といった「定年後の生き方」全般に言えるはずだ。
新時代の到来を前向きにとらえ、自分の頭で考えることを楽しむ。それこそが、“知の巨人”が底抜けに明るく説いた話の本質ではないだろうか。
※週刊ポスト2018年8月3日号