◆風俗嬢と男娼 職業差別を受けるのは女性だけ

──女性のセックスワーカー(風俗嬢)は男性客に、「こんな仕事を親が知ったら泣くぞ」と説教をされたり、侮辱されたりすることがよくある。男娼もお客さんにそういった言葉をぶつけられた経験があるか? という質問を、中塩さんはすべての取材相手にしています。その答えには、日本のジェンダー観が現れていますね。

中塩:本を書くと決めた時から、この質問は入れなくてはと思っていました。というのは、私が知っている男性セックスワーカーって明るいんです。風俗嬢はこういうことを言われるんだよ、あなたはどう? と聞くと、僕はそんな経験ないですね、とあっけらかんと言う人が多かった。だから職業差別を受けるのは女性側なんだろうなと思っていたんです。

 で、今回、実際に質問をぶつけると、予想通りの答えが返ってきました。男性客が風俗嬢を侮辱するのは男尊女卑だから、ということですね。女性でも、フェミニストでも、風俗嬢嫌いっているんです。じゃあ、そういう人が、同じく男娼も嫌いかというと、けっしてそうでもなかったりする。個人の好き嫌いを超えて、何かを考えるきっかけなってくれればと思ってこの質問をしたところもあります。

──まさに風俗は社会を映す鏡です。

中塩:総じて男性のセックスワーカーのほうが、女性よりもストレスは少ないと思います。女性客は、ストーカーになる人はいるかもしれないけど暴力をふるったりはしないだろうし、ゲイのお客さんもほとんどが優しいと言いますから。日本は女性が不利なところが社会のあらゆる場面でありますが、それがわかりやすくあらわれているのが性風俗業界なのではないでしょうか。

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