国内

性風俗従事者 女性だけが職業差別を受けるのはなぜか

中塩智恵子さん。男性に話を聞いてもらいたい既婚女性は多いという。

 風俗はいつの時代も、社会を映し出す鏡である──。女性に比べて、その実態があまり表に出ることのない男性セックスワーカー(男娼)たち。どのように彼らは現在の職業に辿りついたのか。客たちは、何を求めて彼らの元にやってくるのか。長く性風俗業界を取材し、6月に『男娼』(光文社)を上梓した中塩智恵子さんに話を聞くと、既婚女性が抱える淋しさや、男尊女卑社会の実態、人間の欲望の深淵が見えてきた。

 * * *

◆男娼は、溜めこんでいる女性たちの「駆け込み寺」

──この本で中塩さんは、10人の男娼に取材をされています。女性のみならず、男性、LGBTまで、彼らのお客さんは様々で、彼らの働き方も様々です。まず、女性客の中に既婚女性が多いという実態に、驚きました。

中塩:人妻さんの利用は本当に多いようです。その中には、セックスをしないと満足されない方もいる一方で、そうでない方もいます。彼女たちが求めているのは、普通にデートをして、悩みを聞いてもらうことなんですね。

──実際、セックスレスが原因で利用する女性はいない、と答えている男婦の方もいます。

中塩:セックスレスになるまでには、それまでの過程があるわけで、例えば夫婦の会話が全くないとか、スキンシップが皆無だとか。ですからそれはあくまで結果であって、悩みの根源ではないんだろうと思います。女性の欲望は決して性的なものが到達点ではないし、心の内側にあるものを吐き出したいという人妻の方は多い。特に専業主婦の方は、一番身近な夫に認めてもらわないと、誰にも認めてもらえない寂しさや不満を抱えてしまう印象を受けます。私は独身なので、あくまで推測なのですが。

──悩みを聞いてもらうだけなら「女友達」でもいいような気がしますが、それでは満たされないものがあるのでしょうか?

中塩:やはり「男性」を感じながら話をしたい思いがあるのだと思います。それは女友達にはできないことですよね。私は婚外恋愛の取材も長くしているのですが、奥さまが婚外恋愛にはまるきっかけのほとんどが、旦那さんの浮気なんですね。少女マンガのような内面で育ってきた女性って、まだ少なくないと思います。だから結婚して、旦那さんに無碍にされるようになると、暴走してしまうんじゃないかと。

──夫に説教をしてやりたい、というある男娼の言葉が出てきます。夫婦の溝は深いですね。

中塩:彼らは、旦那さんに話を聞いてもらえなくて、いろいろ溜めこんでしまっている女性たちの「駆け込み寺」なっているんです。もちろん、旦那さんは旦那さんで悩んでいたりもする。結局のところ男女って、ある程度の距離感が必要なのかなと思いますね。そうじゃないと緊張感がなくなるから。恋人同士でも夫婦でも、話し合いと思いやりと気遣いが必要というのが、ベタですが、取材を通じて感じたことです。

あわせて読みたい

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン