ビジネス

クラシックラガーや赤星 往年のビールが選ばれ続ける背景

 一方、キリンよりさらに歴史が古く、1877年に発売した日本最古のビールとして知られるのが、サッポロビールから出ている「サッポロラガービール」である。「黒ラベル」のようなゴールドの星マークでなく、赤い星マークということから「赤星」という愛称で呼ばれている。

 かつて、俳優の三船敏郎の台詞で有名になった〈男は黙ってサッポロビール〉というシブいコピーも「赤星」だった。同じ熱処理ビールでも「赤星」はアルコール度数は5%、苦みも「クラシックラガー」ほど強くはなく、「重厚な味わいだが後味はスッキリしている」など、コアなファンの間で人気になっている。

「赤星」はサッポロビールのホームページ内に「赤星探偵団」というコーナーが常設されており、「赤星」が飲める、ちょっと粋な居酒屋や小料理屋、足で稼いだ美味しい料理の情報を紹介するという設定だ。サッポロビールの髙島英也社長は、「赤星」についてこう語っていた。

「ネオ大衆居酒屋という、昭和の匂いが少しする、ちょっとおしゃれで女性が1人でも行ける小ぎれいな居酒屋には大抵、『赤星』が入っていて好評です。また、イタリアンといったいままでなら考えられなかったレストランでも『赤星』が選ばれているんです」

 では、こうした飲食店向けの業務用だけでなく、キリンの「クラシックラガー」同様、「赤星」も量販店で缶の通年販売はしないのだろうか。

「よく考えていきますが、希少価値があるから人気があるっていうところもある。クラフトビールライクなね。そんなに出回ってはいないけど、飲んでみたらとても美味しいと言っていただける商品です」(高島社長)

 希少性が口コミで広がってきたせいか、ここ6年で、「赤星」の瓶の販売量は約2.3倍まで伸びてきているという。髙島氏がクラフトライクと位置づけていたように、「黒ラベル」や「ヱビス」と違って大きな広告宣伝投資はせず、口コミやSNS等によってジワジワと息の長いロングセラー商品にしていきたいのだろう。

 ただし、缶については通年販売こそしていないものの、昨年も数量限定で6月に量販店で発売し、好評だったことから11月にも再度、発売している。そして今年も、去る7月24日から「赤星」の缶が限定販売された。

 ネット通販でも買うことができ、たとえばアマゾンでは350ml缶1ケース(24本)が税込み5540円、1本当たり約227円、500ml缶1ケースが同7955円、1本当たり約331円と、プレミアムジャンルやクラフトのビールと同じような水準の価格帯だ。

「清涼飲料であれば暑ければ暑いほどいいのですが、ビールの場合、35度以上の気温になってしまうと、逆に(脱水症状を気にして)少し敬遠されてしまう」(あるビールメーカー幹部)

 と、連日続く猛暑、酷暑はあまり歓迎ではないようだが、それでもビール最盛期、生ビールでなく、たまには熱処理した苦めの“これぞ古き良き時代のビール”を試すのも悪くない。

●文/河野圭祐(ジャーナリスト)

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
立花孝志容疑者(左)と斎藤元彦・兵庫県知事(写真/共同通信社)
【N党党首・立花孝志容疑者が逮捕】斎藤元彦・兵庫県知事“2馬力選挙”の責任の行方は? PR会社は嫌疑不十分で不起訴 「県議会が追及に動くのは難しい」の見方も
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン