「囮艦隊の陽動が成功し、ハルゼーの空母部隊は囮艦隊の背後に日本の有力艦隊がいると誤認し、全軍で追いかけていた。わが艦隊は10月25日の昼にはレイテ湾まで1時間半の距離に近づいたのです。

 ところが、ここで『大和』は反転し、レイテ湾に背を向けて北上しはじめたんですね。これは海軍の歴史でも“最大の謎”とされている事件です。私は艦橋に行き、上官に『なぜ北進を続けているのですか?』と問い糾したんですが、『若い者は黙っておれ!』と追い出された。

 私はこの作戦に勝機は十分あると考えていました。「大和」の主砲は60cm厚の防御鋼板で覆われ、船体には浮力をつけるバルジも設置されていた。だから、レイテ湾内で座礁させても、他の艦と違って傾いたりしないんです。傾くと主砲を撃てなくなりますが、『大和』なら撃てた。

 座礁させれば米艦載機から猛爆を受け、我々は吹っ飛ばされ生きていないけど、『大和』の主砲は防御鋼板で守られ、艦載機に積める程度の爆弾では破れない。『大和』には世界一の主砲があったからこそ、この作戦には勝機があった。

 海岸にうろうろしていた6万~7万人の上陸部隊に撃ち込んで、運搬船も沈めてしまえば、上陸軍は孤立し、補給を絶たれ、白旗を揚げて終わりですよ。これだけの数の捕虜カードをもって停戦協定に臨めば、有利な停戦に持ち込める。私はそこまで考えていた。『大和』にはそれを実現する力があったのに、試さずに逃げ帰ったのが今でも悔しいんですよ。私は上官に楯突いたことへの懲罰人事で、レイテからの帰国後、『大和』を降ろされました」(深井氏)

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居正広
【救世主になるか】中居正広、退所後も事務所スタッフと連携 ジャニーズの後輩たちに示す“生きる道”
女性セブン
大人気ドラマ『VIVANT』(インスタグラムより)
『VIVANT』で注目の自衛隊「別班」、金大中事件では元メンバーの関与浮上するも安倍元首相は「別班」の存在自体を否定
NEWSポストセブン
フジ・宮司愛海アナ(右)と常田俊太郎氏
【全文公開】フジ・宮司愛海アナ、東大卒実業家兼音楽家と育んでいた半同棲愛 本人は「うふふふ」
週刊ポスト
別々の施設で暮らす2人
おすぎとピーコ、進行するお互いの認知症のシビアな現実 別々の施設に入り「今生の別れ」
女性セブン
港浩一
【改編期の異変】フジテレビが「楽しくなければ」の姿勢を鮮明に 世帯視聴率狙いの番組を一掃し原点回帰へ
NEWSポストセブン
羽生結弦(AFP=時事)と末延さん
羽生結弦と結婚の末延麻裕子さんの関係は“憧れのプルシェンコ”にリンクする 「スケーターとバイオリニストの相性はいい」
NEWSポストセブン
推しの名が書かれたうちわを掲げておおはしゃぎ
【筋金入りの「スー女」】川口春奈、国技館で相撲観戦 推し力士「翔猿」の名前入りうちわを振って応援
女性セブン
タクシーで逃げようとする女性のカバンを掴むコロアキ
《美人転売ヤーを私人逮捕》炎上系YouTuber・コロアキ「俺逮捕されますか?」 逮捕動画に弁護士は「暴行罪や傷害罪に該当する可能性」
NEWSポストセブン
宮司と常田のツーショット
《熱愛》フジ宮司愛海アナ、彼とのデートでも高級ブランドは身につけず 「質素倹約ファッション」を貫く理由
NEWSポストセブン
滝沢秀明氏に告発
「滝沢秀明は強制的にキスをさせる」ジャニーズ性加害問題当事者の会代表が新たな疑惑を告発
女性セブン
羽生結弦(時事通信フォト)と結婚相手の末延麻裕子さん
羽生結弦の結婚相手“まゆちゃん”は社長令嬢ながら元「どギャル」で信念持つ女性 嫁姑関係が心配されるも「彼女なら大丈夫」
NEWSポストセブン
仙台育英を破って107年ぶり2度目の優勝を果たし、感極まる慶応高校選手たち。彼らの髪型も話題になった(時事通信フォト)
甲子園での長髪選手の活躍で「坊主頭にする自由」が理解されにくくなっている
NEWSポストセブン