かつて高級住宅街だった品川駅の高輪口。現在、京急や西武のホテルが立地している
都庁が移転直後まで、新宿は駅の東西に街が延びる形で発展してきた。一方、駅の南側は広大な貨物駅があったので未開拓地になっていた。同地は、国鉄の債務を返還するために1987年に設立された日本国有鉄道清算事業団が所有していた。
1996年、同地に再開発でタカシマヤタイムズスクエアが誕生。南館は全フロアに大型書店の紀伊国屋が入居。本業の書籍販売のほか、劇場「紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA」をオープンさせている。
新宿駅南口方面の発展史で欠かせないのが、2006年に日本初上陸したドーナツチェーン「クリスピー・クリーム・ドーナツ」だ。
連日、店の前には100メートル以上の行列ができるようになり、新宿駅における人の流れを大きく変えた。新宿駅南口に革命を起こした「クリスピー・クリーム・ドーナツ」は、2017年に閉店。入れ替わるように、2016年に誕生したのが高速バスのりばを集約した「バスタ新宿」だった。
2000年代から格安で移動できる長距離の高速バス・夜行バスの人気が高まっていたが、行政の対応は後手に回っていた。バスターミナルが未整備のため、バス事業者は各社でのりばを設けた。
その結果、最盛期には新宿駅界隈に19か所もの高速バスの停留所が乱立してしまう。同じ新宿駅とはいえ、停留所が分散しているのは利用しづらい。「バスタ新宿」は、そんな不便を解消し、停留所の集約化・拠点化をする目的で開設された。
新宿駅は東口・西口・南口で異なる発展過程を経てきた。新宿駅という同じ拠点を共有しながらも、違った街のような顔をしているのはそのためだ。
同じく、品川駅も東口とされる「港南口」と、西口とされる「高輪口」とでは発展過程がまったく異なる。