国際情報

中国の路上でマフィア100人超が抗争も死者がゼロの理由

マフィアも政権の方針には敏感(写真:アフロ)

 マフィアの世界では血の結束が叫ばれる。死をも厭わぬ覚悟が彼らを特異な集団たらしめている、というのがこれまでの通説だったが、近年の中国においては趣が異なるようだ。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。

 * * *
 もう十年ほど前から、中国の「黒社会」(マフィア)の世界では、抗争が起きても相手を殺すことはなくなったという。というのも殺人事件ともなれば、警察も徹底的して犯人を捜し逮捕するだけでなく、背後にある犯罪グループに対しても執拗に迫るからである。

 こうした傾向は、習近平政権になってからは、より強化されてきた。世界的に有名だった東莞の歓楽街が、あっという間に“掃黄”(売春産業の一掃)されてしまったのは、記憶に新しいところだ。

 だが、いくら掃除しても、こうした問題を撲滅することは難しい。それも一方の真実だろう。そのことを思わせる事件が発覚したのは、6月末のことだ。湖南省長沙市の人民検察は、銃や刀で武装した犯罪者グループの抗争にかかわったとして、93名の容疑者を逮捕したことを公表したのである。

 事件を伝えた『澎湃新聞』の見出しは、〈売春チラシを配る犯罪グループが銃と刀で武装し激突 90人以上を逮捕〉である。

 それにしても100人以上が路上で切り合ったのに、警察が駆けつける前にみな消えてしまい、また死者もいなかったという現場はどうなっていたのか。

「できるだけ殺人を避けようとするため、現場には指などがたくさん落ちていることが多い」

 と社会問題を担当する記者は語るが、それはちょっとした恐怖の現場だろう。

 一方、こうした事件が闇に葬られたままにもならないのが中国である。地元警察は260人体制で容疑者逮捕に臨み、10カ月の捜査を経て93人を逮捕、ピストル64丁を押収したという。

 背筋が凍るような縄張り争いに警察の執拗な追及。こんなリスクを冒してもやめられないほど売春はもうかるらしく、『澎湃新聞』によれば、メンバーのうちの一人は、短期間で180万元(約2900万円)の家を建てていたという。

関連キーワード

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト