そのお節介には、〈未婚の男女を見るとほっておけない〉、遣り手ジジイ(?)ぶりも含まれ、バツイチ子持ちのカンヤダのお相手として鈴木氏が引き合わせたのが、EXILEのヴォーカルに似た〈ATSUSHI〉だ。
〈タイの田舎パクトンチャイに暮らすカンヤダとバンコクに住む日本とタイのハーフのATSUSHI君。ふたりの物語は現在進行形。まだ、結論は出ていない〉〈ぼくは現在、このふたりの事が何かと気になる〉と、鈴木氏はその恋の顛末を綴り、自身の生い立ちや経験も含めて、虚実入り混じる実録小説に仕立てている。しかし偶然出会った他人のために知人を巻き込み、仕事の面倒までみるとは、下心は本当になかった?
「実際、大変な美人ですからね。妙な気を起こしたら酷い目に遭いそうな気もしたし、そこはタイ語が話せなくて助かりました(笑い)。それでもここまで関係が密になったのは、出会ったからとしか言いようがない。
実をいうと当初から僕は彼女に宮崎駿的なものを感じてもいた。つまり良くも悪くもわがままで、自分の感覚や経験だけを元に生きられる前近代性というかな。外部から得た知識をかざし、理性的に振る舞う現代人に対し、宮さんやカンヤダは自分が体験した事実で物を見ようとする。その逞しさに僕は常々感嘆し、しかも全然うまくいってないから、つい助けたくなるんですよ。
あの宮さんも一時は『カリオストロの城』で大赤字を出し、もう映画は撮らせないとまで言われた。それなら会社を辞めて絵本で食べていくという38歳の妻子持ちを僕は放っておけず、実はその時の話し合いが『ナウシカ』誕生に繋がるんです。カンヤダに関してもあの率直さをうまく生かせないかと思ったんだけど、何しろ気紛れでね。周りは終始、振り回されっ放しです!」