ロマンスカーの復権を掲げて2005年に運行を開始した小田急50000形VSEも、2006年ブルーリボン賞を受賞
「ブルーリボン賞は、特急列車や観光列車の車両が受賞しやすい傾向にあります。しかし、日常で使われる通勤列車用の車両にも、素晴らしい車両はたくさんあります。そうした理由から、1961年に通勤用車両を顕彰するための賞としてローレル賞が新たに創設されたのです」(同)
ローレル賞が創設されたことで、日頃は目立たない存在だった通勤用車両にも光が当たることになる。
しかし、1973年にブルーリボン賞・ローレル賞のあり方に一石を投じる事態が勃発する。西日本鉄道(西鉄)が新たに2000形の運行を開始したのだ。
西鉄は福岡県福岡市を中心に大宰府市や久留米市、大牟田市などに路線網を有する。西鉄の大動脈は県都・福岡市と大牟田市を結ぶ大牟田線(現・天神大牟田線)だ。大牟田線は国鉄(現・JR九州)の鹿児島本線とほぼ同じ区間を並走し、ライバル関係にある。
鹿児島本線との競争に負けないよう、西鉄は大牟田線で所要時間の短縮や運転本数の増発に努めてきた。さらに、快適な移動空間を確保するという乗客サービスの充実も図る必要があった。
特急列車と通勤列車の2つの顔を持つ西鉄2000形の誕生は、西鉄と国鉄との熾烈な競争による副産物でもあった。
「西鉄2000形は、ブルーリボン賞・ローレル賞どちらの対象にもなり得る車両でした。西鉄2000形はローレル賞受賞ということで落ち着きますが、これを機にブルーリボン賞・ローレル賞の選考基準が見直されることになりました。現在、ブルーリボン賞は最優秀車両、ローレル賞は優秀車両といった位置付けになっています」
時代や社会の要請で、鉄道車両のデザインや技術開発の方向性も大きく変化する。また、鉄道利用者のライフスタイルの変化も鉄道車両に影響を及ぼすことがある。
2000年前後に開発された鉄道車両は、バリアフリー構造や混雑時でも乗り降りしやすいようにワイドドアが採用されている。
また、2013年にJR九州が運行を開始した”ななつ星in九州”のようなクルーズトレインの登場も時代の変化によるものと言えるだろう。