息子の一宏社長も前向きだ。
「被災直後はショックがありましたが“焦っても仕方ない。電気が動いたらどうリカバリーできるか”を考えて行動しました。今回の災害でわかったのは、周りの皆さんが応援してくれる、支えてくれること。前を向いて歩いていけることが復活するいちばんの原動力でした」
今回の被災で博志会長は、改めて「地元」を意識するようになったと言う。
「“被災して困ったから支援を待つ”という姿勢では会社はダメなんです。今回の被災で、日頃から“臨戦態勢”になり、本拠地に根づいて活動することの大切さを改めて思い知りました。これを機に、原点に戻ろうと思います」
彼らにとっての原点とは、「この場所でおいしいお酒を造る」ことに他ならない。
「東京で広告宣伝にいくら力を入れても、お客さんがおいしいと思わないお酒を売ったら意味がない。だから今後は東京駐在のスタッフも全員、徐々に山口に呼び戻すつもりです。地元のいろいろなかたが支えてくれるなかでもう一度初心にかえり、この土地で一生懸命おいしいお酒を造って、それを世界に発信しようと思います」(博志会長)
最後に博志会長が9月6日に発生した北海道胆振東部地震について思いを語った。
「このたびの胆振東部地震により、被災された皆様ならびにご家族の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。被災された直後は、なかなか前を向けず、もうダメだと思うときもあるかもしれません。しかし、真面目に小さなことを少しずつでも積み重ねていけば、きっと明るい未来が見えてくるでしょう」
濁っていた東川は、ようやく澄んで透明になってきた。そろそろ、長らく待ちわびた人たちの手元に復活した獺祭が届くはずだ。
※女性セブン2018年9月27日号