突然やってくる危機を、寸前で免れた経験を語るのはC氏(70)だ。
「自宅近辺で車を運転していた時でした。ほんの数秒でしょうか、ふっと意識が遠のいて、気づいた時には、赤信号の交差点を直進する寸前だったんです。慌てて急ブレーキを踏んで事なきを得ましたが、危うく大事故を引き起こすところでした。あと1秒、反応が遅れていたら……と今でもゾッとします」
A~C氏に共通するのは、70歳前後を迎えていても、いずれも健康に不安がなく、むしろ自信を持っていたということだ。ではなぜ突然倒れたのか。思いがけない発作のトリガー(引き金)となるのが不整脈だという。
不整脈の患者は、近年増加している。厚労省・患者調査によれば、受診者数は2008年には37万人、2011年は45万人、2014年には52万件と増え続けている。
正常な心臓は、1分間に約50~100回脈を打ち、1日に約10万回拍動する。しかし、様々な原因で脈拍数が変動し、リズムが乱れる状態を引き起こすのが不整脈だ。心臓血管研究所所長の山下武志医師が指摘する。
「実は、日本人の約9割が不整脈を持っていると言われています。厄介なのは、発生が“いつ起こるか分からない”ことです。脈拍は常に乱れているわけではなく、様々な要因で“いきなり”乱れるのです」