「店の歴史とほぼ同じぐらいの、もう40年は通っているけど、この味のあるオーナーと話してごらんよ。こんな話のわかる父親いないよ。それに、料理上手な別嬪(べっぴん)のおかあさん(夕起子さん)。おふくろってなんでも作っちゃうだろ。どれも美味しいし。だからこそ客筋もみんな和やかでええ人ばっかりなんだよ」(70代、営業OB)
夕起子さんは、「料理を皆さんに喜んでいただいてますけど、絶対にへたくそだと思います。習ったものはひとつもなくて、みんな見覚えだもの」と顔の前で手をひらひらと振る。
「我々のソウルフードだと思う紅しょうがの天ぷらは大阪一番でしょ。どて焼もそうだし、とにかくここの料理はうまい。それに、ここで知り合った客はみんな、キャラの立つ個性的な人ばかりで絶対飽きない。雨が降ろうが何があろうが、いつだって店は開いてる、これじゃ通う方も誠意を示さんといかんですよね。と思っていながらも、その割に週に1度しか来てないんです、私。すんません、行いをあらためます(笑い)」(60代、元営業マン)
飾らないリビングで、気を遣わずに飲むうまい酒。「こういう店には、焼酎ハイボールがぴったりだと思う。初めて口にしたときは、甘くないのにびっくりしたし、うれしかったし。すぐに馴染んじゃって、もうこれ一筋に飲んでますね」(60代、プログラマー)。
高野山の麓で生まれ育った公世さんは、伏見の造り酒屋で働いていた20代後半、「酒が大好きだった父親に、好きなだけ飲ましてやりたい」と、馴染みのないこの地で創業した。
「最初から立ち飲みができる店でした。2月の開店で、11月に結婚。いいお客さんもついてくれてここまで来ました。80歳までと考えていたけれど、いやいや、こんな楽しいお客さんが来てくれるなら、あと10年は続けさしてもらいますよ」(公世さん)