そもそもインフラは我々の健康診断や人間ドックと同じように定期的なメンテナンスが必要だが、今のところそれに相当する調査方法は極めて原始的である。たとえば、ビルやマンションの外壁タイルなどは剥がれて落下する危険がないように竣工後10年を経過したら点検しなければならない。
しかし、その方法は足場やゴンドラを設置し、作業員がハンマーや棒で叩いて音で判断する「打診調査」が今なお主流である。橋やトンネルをはじめとする公共インフラの調査方法も大差はないが、今後は渦電流やX線などの従来とは異なる検査技術を組み合わせてデータを集め、AIやロボットを利用して簡単に調査・点検できる技術開発に予算を大々的に投入していくべきである。
いずれにしても、これから日本はインフラの老朽化対策に莫大なお金が必要となるわけで、これは「国策」として取り組んでいかねばならない。しかし、巨額の債務を抱える国が、この上さらに老朽化対策に予算を振り向けるのは難しい。
そんな状況の中で、こと東京に関しては、やり方次第でこの危機を乗り越えられると私は考えている。
東京都の「マンション実態調査」(2011年)によると、都内には分譲マンションが約5万3000棟あり、そのうち2割強にあたる約1万2000棟が震度6強や7の大地震に見舞われると倒壊する危険性が高い「旧耐震基準」で建てられた物件だという。
この老朽マンション対策として、都は「玉突き建て替え」制度を2019年度にも創設すると報じられた(『日本経済新聞』8月19日付)。これは、不動産会社が老朽マンションを買い取れば別の場所に建てるマンションの容積率を上乗せし、買い取った物件の跡地にマンションを建設する場合も別の老朽物件を買えば容積率を積み増す―というものだ。