さらに検診にはお金もかかる。人間ドックの予約サイト『人間ドックのここカラダ』が2018年に行った調査によれば、2017年度の婦人科検診における平均受診予算は1万800円。
「CTスキャンや、がんのPET検診などをつければそこに数万円プラスされる。検診は健康保険の適用外ですから、全額自己負担。かなりの出費になります」(室井さん)
たとえ自治体の検診であったとしても、無料で受けられるのは一部の年齢とメニューだけ。金銭面から考えても、取捨選択が求められるのだ。では、一体どの検診を受けるべきか。
◆貧血で手術を受けると死亡リスクが
【血圧】
専門家の意見が「受けるべき」と一致したのは、血圧測定だ。亀田ファミリークリニック館山院長の岡田唯男先生が言う。
「血圧測定は、検診時に伴う苦痛や副作用がないうえ、受けることで得られるメリットがかなり大きい。年齢に関係なく必須です」
高血圧は放置すると動脈硬化を引き起こし、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めるばかりか、腎臓疾患や眼底出血など重篤な結果を招くことにもつながる。血圧を把握することでそれらを予防することができるので、検診ではもちろん日常的にもこまめに測りたい。
【貧血検査】
血圧とともに定期的に受けたいのが貧血検査だ。前出の室井さんによれば貧血は思わぬリスクを伴うという。
「アメリカの血液学会は『手術をする前に貧血治療が必要』と発表しており、貧血状態で手術を受けると合併症や死亡率を3~4割も高めるとされます。血液検査で簡単にわかるため、世代を問わず受診を推奨します」
【乳がん検診】
11人に1人がかかるとされる乳がんだが、代表的な検診は乳房専用のレントゲンである『マンモグラフィー検査』とエコーで乳腺の状態をみる『超音波検査』の2つ。
国立がん研究センター検診研究部の中山富雄先生はマンモグラフィー検査をすすめる。
「検診の科学的な有効性が確認されている40代から75才くらいまでは2年に1回必ず受けることを推奨します」
一方で、超音波検査には懐疑的だ。
「この検査が広く普及しているのは日本だけです。エコーでがんを見つけるのは医師個別の腕に左右されてしまうため、見落としも多い。乳腺外科など専門の医師によるものであれば精度に期待してもいいが、そうでない限りはあまり意味がないと思います」(中山先生)
また、何より怖いのは、検診を受けて異常なしだったことに満足してセルフチェックを怠ることだ。
「月に1回程度、定期的に自分で触って形に異常がないか、しこりがないかをチェックして、たとえ検診を受けた直後だったとしても、少しでも違和感を覚えたら病院へ行ってください」(中山先生)
【大腸がん検診】
乳がんと並んで女性がかかりやすい大腸がんは、「便潜血検査」を定期的に受けることで大きくリスクを減らせる。
おおたけ消化器内科クリニック院長の大竹真一郎先生が言う。