◆避けられない人権侵害への対策
もう一つの課題は、差別問題への対策である。モンゴル出身力士など外国人力士が増えているが、差別防止の対策は必ずしも万全とはいえない。本場所の館内にはあからさまな人種差別のヤジが放たれるし、大相撲中継をするNHKのアナウンサーや解説者さえ平気で「ぜひ日本人の横綱を」などと口にする。
サッカーなどではサポーターやファンの差別的行為に厳しく対処する姿勢をとっているが、それと比べていくら国技とはいえあまりに鈍感すぎるように思える。大相撲界が差別を野放しにしているとレッテルを貼られたり、大きな国際問題に発展したりする前に対策の手を打っておくべきだろう。
◆親方を民主的統制のもとに置く体制づくりを
そして、特定の親方の言動によって協会が機能不全に近い状態に陥るのを防ぐためには、部屋や親方を民主的統制下に置くことが必要である。けれども、それを「一門」という派閥をもとにした集団に委ねるのは無理がある。したがって外部の専門家を加えた組織を設置するべきだろう。
このような改革を進めようとすると、当然ながら親方衆からの反発も予想される。しかし相撲協会が公益財団法人の認定を受けた以上、神事や伝統という名のもとに不透明な組織運営や理不尽な人権侵害が温存されることがあってはならない。大相撲界にとって最大のスターだった貴乃花が最後に突きつけた批判を、抜本的な組織改革へのきっかけとして活かしてほしい。