国内

ハガキによる特殊詐欺 雑だが「割はいい」その内幕

ハガキを使う特殊詐欺は雑だが楽に儲かる

 最近では、年賀状以外でハガキを使う機会はほとんどないだろう。その年賀状もメールやSNSに代わりつつある。ところが、特殊詐欺の世界では「ハガキ」がまだまだ現役だ。実に古典的な方法だが、なぜ今もハガキを使う特殊詐欺が続いているのか、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
「法務省から訴訟がどうのこうのってハガキが届いたとよ…。あんたどういうことかわかるね?」

 筆者の友人であるXに、九州の実家に住む母親から電話がかかってきたのは今年の九月上旬の事だった。友人もまた筆者と同じくメディア・報道関係の仕事をしている事もあり、それがいわゆる「特殊詐欺」であることを一発で見抜き助言をしたことで、母親が被害にあうことはなかった。

「法務省」を名乗り、財産の差し押さえを行う等の、半ば脅し的な内容が書かれたはがきや封書が送り付けられているという事案は、全国各地で発生している。昨年から報告が目立っているため、テレビや新聞といった多くのメディアが警鐘を鳴らしてきたから、ピンとくる読者も少なくないだろう。報道されると一時的にハガキなどの送りつけは止まるが、またすぐに送り付けが頻発し、メディアが報じる…といったいたちごっこ状態になっているのが実情だ。

 蔓延しているこの「特殊詐欺」だが、送りつけられているハガキを見ると、その何もかもが極めてお粗末で、はっきり言えば「騙されてしまう人がいるのか」というほど、雑な“シゴト”であることをうかがわせる。

「法務省なりすましハガキは、メディアも何度か取り上げてきました。書かれている番号に電話をかけてもつながらないとか、記載されている住所を調べても住所が存在しない、そもそも法務省内には存在しない部署名が書かれていたり、少し調べればわかる”雑な詐欺”なんですよ。一年半くらい前にこうした事案を把握し、少し取材をしましたが被害者は見つかりませんでした。まあこんなものに引っかかる人間はそうそういない、そう思っていたのですが…」

 こう話すのは、地方ブロック紙の警察担当記者。特殊詐欺はありとあらゆる形で発生しており「法務省なりすましハガキ」の件についても、当局ではいち早く把握していた。しかし、劇場型、携帯乗っ取り型などの手の込んだ方法が次々に産み出されていく中で、このような雑で単純な手法に騙される人はいないだろうから、放っておいても大丈夫なのではないか、そう感じていたのだという。しかし、それから半年ほどが経過したとき、同事案における被害者が続出していることを、取材で知った。

「まだ騙されている人がいるとはと、愕然としました。これだけ当局やメディアが警鐘を鳴らしてもダメなのかと。どうしようもない無力感に襲われます」(ブロック紙記者)

 さて、このような“雑な手法”で詐欺行為を働こうとしている輩は、いったいどんな者たちなのか。「法務省なりすましハガキ」を送り付けたとして今年九月、東京都内の男が逮捕された。このグループとは関わりがないが、もともと半グレのグループに属していたというある男性は、特殊詐欺は「割が良いシゴト」といって憚らない。

「ハガキの送りつけは古典的で、詐欺師ですら“騙される人は多くない”と考えています。でも下手な鉄砲も数打てば当たるんです。電話を使った、いわゆるオレオレ詐欺は本当に難しくなった。ハガキや封書なら一通数十円。釣りと一緒で、餌付けた針をたくさん垂らしておいて、あとは待つだけだから、喋りのテクニックがなくてもできる。こんなハガキに騙されて電話するくらいだから、相手だって言いくるめやすい人でしょう。“オレオレ(詐欺)”の時みたいな会話テクニックもいらないでしょう。1000通も送れば数件のリターンはあるでしょうし、10万でも20万でも取れれば大儲けでしょう」(半グレ業界に詳しい男性)

関連キーワード

関連記事

トピックス

山田和利・裕貴父子
山田裕貴の父、元中日・山田和利さんが死去 元同僚が明かす「息子のことを周囲に自慢して回らなかった理由」 口数が少なく「真面目で群れない人だった」の人物評
NEWSポストセブン
国内未承認の危険ドラッグ「エトミデート」が沖縄で蔓延している(時事通信フォト/TikTokより)
《沖縄で広がる“ゾンビタバコ”》「うつろな目、手足は痙攣し、奇声を上げ…」指定薬物「エトミデート」が若者に蔓延する深刻な実態「バイ(売買)の話が不良連中に回っていた」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
【美しい!と称賛】佳子さま “3着目のドットワンピ”に絶賛の声 モード誌スタイリストが解説「セブンティーズな着こなしで、万博と皇室の“歴史”を表現されたのでは」
NEWSポストセブン
8月27日早朝、谷本将志容疑者の居室で家宅捜索が行われた(右:共同通信)
《4畳半の居室に“2柱の位牌”》「300万円の自己破産を手伝った」谷本将司容疑者の勤務先社長が明かしていた“不可解な素顔”「飲みに行っても1次会で帰るタイプ」
NEWSポストセブン
騒動から2ヶ月が経ったが…(時事通信フォト)
《正直、ショックだよ》国分太一のコンプラ違反でTOKIO解散に長瀬智也が漏らしていたリアルな“本音”
NEWSポストセブン
ロシアで勾留中に死亡したウクライナ人フリージャーナリスト、ビクトリア・ロシチナさん(Facebook /時事通信フォト)
脳、眼球、咽頭が摘出、体重は20キロ台…“激しい拷問”受けたウクライナ人女性記者の葬儀を覆った“深い悲しみと怒り”「大行列ができ軍人が『ビクトリアに栄光あれ!』と…」
NEWSポストセブン
谷本容疑者(35)の地元を取材すると、ある暗い過去があることがわかった(共同通信)
「小学生時代は不登校気味」「1人でエアガンをバンバン撃っていた」“異常な思考”はいつ芽生えたのか…谷本将志容疑者の少年時代とは【神戸市・24歳女性刺殺】
NEWSポストセブン
大谷の「二刀流登板日」に私服で観戦した真美子さん(共同通信)
「私服姿の真美子さんが駆けつけて…」大谷翔平が妻を招いた「二刀流登板日」、インタビューに「今がキャリアの頂上」と語った“覚悟と焦燥”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚を発表した(左・Instagramより)
《お腹にそっと手を当てて》ひとり娘の趣里は区役所を訪れ…背中を押す水谷豊・伊藤蘭、育んできた3人家族の「絆」
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
《前科は懲役2年6か月執行猶予5年》「ストーカーだけでなく盗撮も…」「5回オートロックすり抜け」公判でも“相当悪質”と指摘された谷本将志容疑者の“首締め告白事件”の内幕
NEWSポストセブン
硬式野球部監督の退任が発表された広陵高校・中井哲之氏
【広陵野球部・暴力問題で被害者父が告白】中井監督の退任後も「学校から連絡なし」…ほとぼり冷めたら復帰する可能性も 学校側は「警察の捜査に誠実に対応中」と回答
NEWSポストセブン
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン