「20年という数字にはどのような根拠があるかわかりませんが、かなりの長期で設定されているのは、後妻業のような感じで突然現われた配偶者が、家を手に入れて、さらに現金の2分の1を持って行くというようなことが起きたら子供たちが救われない。昨今の社会情勢を意識した設定でもあるのでしょう」
◆201万円の負担増
ただし、注意しなければいけないのは相続税だ。外した場合、「一次相続」での相続税額は、法改正前よりも下がることになる。
相続税の場合、配偶者控除が非常に大きいので、妻が多くの遺産を相続しても、税額は少なくて済む。別掲図の例でいえば、本来、一家で300万円以上納めるはずだった相続税額が、自宅を妻に贈与すれば100万円台に抑えられる。
ただし、この“節税”には落とし穴が存在している。妻が亡くなった場合の「二次相続」と通算して考えると、一家が納める相続税は、むしろ膨れ上がるリスクがあるのだ。相続人の数が減る二次相続では、基礎控除の額も少なくなる。
妻に手厚く資産を渡したぶん、子供たちの負担が増す可能性が出てくるのだ。この問題の構図は、「配偶者居住権」の場合と同様だ。
別掲図の例でもわかるように、一次相続の際に、新たな相続ルールを利用して自宅を遺産分割の対象から外していると、二次相続では子供2人が合わせて500万円近い相続税を払うことになってしまうのだ(妻の資産が目減りしていないと仮定)。ゆい会計事務所・代表税理士の西津陵史氏はこう注意を促す。