「千秋楽に病院で男子ゴルフの『ダンロップフェニックス』の放送を見ていたら、テロップでいきなり、〈輪島優勝〉と出て驚いたよ。看護師が“理事長から電話です”というから、てっきりタニマチのゴルフ場の理事長かと思って出たら、相撲協会の理事長だった。『これから大銀杏結って来てほしい』といわれて慌てて会場に向かったんだ」
実際にはこの時、13日目の時点で優勝は決まっていたので、“輪島流ジョーク”だったのだが、その豪放磊落なキャラクターがファンには愛された。
「ある年の九州場所前に、こっそりゴルフをしていたら、前の組に打ち込んでしまった。謝りに行こうとしたら、(春日野)理事長と師匠(花籠親方)がラウンドしていてね。慌ててハーフでスパイクを脱いで帰ったよ(苦笑)」
ただ、相撲に真摯に取り組む横綱でもあった。だからこそ、強かった。
「遠山の金さんが遊び人を装っていたのと同じように、私も稽古には精進した。稽古して勝てば、遊べるわけだからね」
魅力的な人柄でファンの注目を集め続ける、不世出の国民的スターだった。
※週刊ポスト2018年10月26日号