【著者に訊け】村田沙耶香氏/『地球星人』/新潮社/1600円+税
大人も何かと大変だが、子供を〈いきのびる〉のはもっと大変だった。
村田沙耶香著『地球星人』の主人公〈笹本奈月〉は、だから虚構を必要としたのだろう。ある時、玩具売場で埃を被っていたハリネズミのぬいぐるみ〈ピュート〉をお年玉で救出した彼女は、ピュートを通して〈ポハピピンポボピア星の魔法警察〉から使命を与えられ、〈気配を消す〉魔法や〈幽体離脱の魔法〉が使える〈魔法少女〉になった。お母さんから出来損ないと呼ばれた時や、塾の〈伊賀崎先生〉にいたずらされた時も、奈月は必死に念じた。〈からっぽになって従わなくては〉〈大人に捨てられたら子供は死ぬ。だから私を殺さないでください〉と。
毎年お盆になれば信州の〈秋級(あきしな)〉にある祖父の家で、山形に住むいとこ〈由宇〉に会える。2人は5年生の夏に〈針金の指輪〉を交わした夫婦でもあり、その時、誓ったのだ。〈なにがあってもいきのびること〉と。
魔法使いも時代や地域によってタイプは様々だが。
「私が印象的なのは再放送で見た『魔女っ子メグちゃん』ですね。可愛くて強くてセクシーで魔法も使えるメグちゃんは私にとって完璧な女の子。思春期の頃はそういう女の子の優等生にならなきゃいけないことが本当にしんどかった。特に中学時代は、友人関係でトラブルがあって苦しくて遺書を書いたり、逆に卒業式さえ済めば生き延びられると思ったり。自分なりにしんどくても生き延びることを考えていました。そういう自分の生への執着みたいなものも、本書には反映されているのだと思います」