国内

ネット「なりすまし」 被害者だけがいつまでも苦しむ理不尽

ネット「なりすまし」が原因で世間から隠れるように暮らす

 世界で何億人もの登録があるフェイスブックに、ある有名女優が数百人いると話題になったことがある。もちろん、すべてが「なりすまし」だったので運営会社が地道に削除を繰り返している。有名人なら「なりすまし」によるネット上の言動を誰も信用しないが、一般人の「なりすまし」はそうもいかない。「なりすまし」によって人生と生活を奪われ、今も苦しむ人たちについて、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
「娘はもう自宅にはいません…。救済措置なんて何にもありませんでしたし、とにかく“自分を知る人がいないところへ行きたい”と、今は海外で生活しています」

 東北地方某市に住む川北祐子さん(仮名・50代)は、今から約4年ほど前に「ネットなりすまし」の被害者にあった女性の母親だ。もうかなり時間がたったとはいえ、今思い出しても腹立たしく、あの時に感じた恐怖によって眠れなくあることもある。それは本当に突然の、予期せぬ出来事だった。

「下の子(被害者の弟)がある日、姉ちゃんが変な書き込みをしている、と大慌てでやってきました。息子が見せてくれたパソコンの画面には、あるSNSに娘の名前で女性の裸などがたくさん投稿されており、ワイセツな言葉、男性を誘うような言葉が書き込まれていたのです。すぐ娘に問いただしましたが、全く知らないようで、画面を見ると泣きだしました。でも、プロフィールには娘の通う高校名やクラス名も出ている。情けないですが何が起きたのかわからず私もパニック状態で、もしかしたら私たちの知らない娘の違う一面なのかもと、あろうことか疑ってすらいたのです」(川北さん)

 学校と警察に相談しつつ、父親がSNSの運営側に連絡を取り、娘の名を名乗るアカウントは二~三日後には消えた。そしてさらに数日後、学校から驚くべき「報告」が川北さんの元に届いた。

「娘と同じクラスの男子生徒が、娘の名前を騙り“悪ふざけ”でやったことだとわかったのです。男子生徒とその親御さん、担任と教頭、校長が自宅に来て謝罪がありました。同時に、男子生徒にも将来がある、と事件にはしないでほしいと男子生徒の両親が土下座をして、賠償金の話までされました。冗談じゃない、娘の将来はどうなるのかと悔しい気持ちでいっぱいでしたが、警察や弁護士に相談しても”事件化しても得られるものはない”と言われるばかりで、本当に泣く泣く、私たちは我慢するしかなかったのです」(川北さん)

 こうして“真犯人”が判明しても、川北さんの娘をめぐる状況は、少しも良くならなかった。学校だけでなく、近所中からも好奇の目にさらされ続けたのだ。かたや男子生徒は「反省した」と言いながら、事件の顛末を面白おかしく友人らに吹聴して回り、何事もなかったかのように東京の大学に進学した。一方、川北さんの娘はそうした環境に耐えられず、不登校気味になり学校を辞めたのである。

 彼女はその後「私の事を誰も知らない場所に行きたい」と言って海外に留学し、現在も海外で生活している。成人式ですら地元に帰ってこなかったのだという。

「なりすまし被害にあった側はやられっぱなしで、一度コトが起きてしまうと、もうどうすることもできない。賠償金を使い、弁護士さんに頼んで娘に関するネット記事を消してもらったりしましたが、探せば未だにネット上に娘の名前が出てくる。こんな理不尽なことがあるでしょうか?」(川北さん)

 ネットで「なりすまし」にあうと、被害者はどうにもできない。泣き寝入りをするしかない──。

 同じような被害にあい、今もひっそりと暮らさざるを得ない男性がいる。

「警察に言っても“無視しな”と言われるだけ。弁護士を雇うお金もありませんし、もうネットも見ていない。泣き寝入りするしかないんですよ」

関連記事

トピックス

核保有の是非を“議論”することすら封殺される状況に問題はないのか(時事通信フォト)
《あえて問う「核保有シミュレーション」開発費用と年数》専門家は「日本の潜在的技術能力なら核弾頭開発は可能」と分析 原潜に搭載なら「3兆~5兆円の開発費と年5000億円の維持費」
週刊ポスト
年末、大谷夫妻はハワイで過ごしていたようだ
《お団子白コーデの真美子さんに合わせたペアルック》大谷翔平の「イジられる」魅力…ハワイではファンに妻と笑顔の対応、後輩も気を遣わない「自信と謙虚さのバランス」
NEWSポストセブン
一世を風靡したビートきよしの現在とは
《意識失い2025年に2度の救急搬送》難病で体重22キロ増減のビートきよし、週3回人工透析も…“止められない塩分摂取”「やり残したことなんてない」 
NEWSポストセブン
川島なお美さんを支え続けた、夫でパティシエの鎧塚俊彦氏(2011年10月)
《また恋をしたいとは思っています》パティシエの鎧塚俊彦氏、妻・川島なお美さんを亡くして自問自答の10年「僕らの選択は正しかったのか…」
NEWSポストセブン
引退する棚橋弘至(右)と、棚橋への思いを語る武藤敬司(左)
《棚橋弘至がついに引退へ》「棚橋も俺みたいにハゲていけばよかったんだよ」武藤敬司が語ったかつての付き人に送る“はなむけの言葉”
NEWSポストセブン
餅つきに現れた司忍組長
《六代目山口組の餅つきに密着》近隣住民も驚いた「6時間の“ヨイショ”の掛け声」…高山清司相談役の登場に警察が驚愕したワケ
NEWSポストセブン
フジテレビをはじめ、女性アナウンサーをめぐる様々な「組織改変」があった2025年(時事通信)
《テレビ各局の社内改革》ひっそりとなくなっていた「女性アナウンサーの人気グッズ」…フジテレビは「コーディネーター職」新設も止まらぬ“退社ラッシュ”
NEWSポストセブン
店を出て言葉を交わす2人(2025年11月)
《寄り添う夫婦の黒コーデ》今井美樹と布袋寅泰、街中でかかげたキラりと光る指輪に妻の「プライド」高級スーパーでお買い物
NEWSポストセブン
結婚を発表した長澤まさみ(時事通信フォト)
《圧巻の8頭身ボディ》結婚発表の長澤まさみが語っていた「タイプの男性」 インタビュアーも虜になったオーラと「人間力」
NEWSポストセブン
今森茉耶(事務所HPより、現在は削除済み)
《ゴジュウジャー降板女優の今森茉耶》SNS投稿削除で“消息不明”に…母親が明かした複雑な胸中「何度でもやり直せる」
NEWSポストセブン
2025年に離婚を発表した加藤ローサと松井大輔(左/本人インスタグラム、右/時事通信フォト)
《ファミリーカーの運転席で弁当をモグモグ…》2児の母・加藤ローサ、離婚公表後の松井大輔氏との現在 いまも一緒に過ごす元夫の愛車は「高級外車」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」新春合併号発売! 2026年を見通すオールスター14対談ほか
「週刊ポスト」新春合併号発売! 2026年を見通すオールスター14対談ほか
NEWSポストセブン