筆者が訪ねたのは、東京某所のターミナル駅近くにあるアパートで家族と暮らす大河原啓介さん(仮名・42歳)。大河原さんの名前を検索すると、今もフェイスブックにツイッター、ブログやユーチューブやニコニコ動画のアカウントがズラリと表示されるのだが、一つとして“本人が管理している”ものはない。それらはすべて、第三者が大河原さんを貶めるために開設した「なりすまし」アカウントなのだ。

「私が以前、生活保護を受けながら就労支援施設に入っていた頃、施設で知り合った女性から彼氏に関する相談を受けたのがきっかけなんです。彼氏は女性に食事をおごらせたり金品をたかったりしていたので、私が間に入ろうと女性にアドバイスをしたんです。まあ、先方は“邪魔された”と思ったのかもしれませんが、それ以降から、ネット上に私の名前を騙るアカウントがたくさん開設され始めたのです。成りすましアカウントは、彼がやっているに違いありません。

 女性とはその後、疎遠になりましたが、私の名前を騙るアカウントは引き続きひどい投稿を続けて、様々な人のアカウントを攻撃していた。本当に嫌な気持ちになり警察に相談しましたが“ほっとけ”と言われるばかり。弁護士に頼むだけの金銭的、時間的余裕だってない。そもそも、相手の名前が何となくわかるだけで、居住地などの詳細な情報は知らないんです」(大河原さん)

 有名な漫画家が亡くなった際に、漫画家のツイッターアカウントに大河原さんを名乗るアカウントが不適切なツイートを飛ばし、炎上したこともある。何も知らない他のツイッターユーザーからは「大河原啓介」はとんでもない奴だとの声が相次ぐ。

 大河原さん本人が以前、SNSにアップしていた写真、居住地などの個人情報まで「なりすまし」の第三者が悪用していたものだから、ネット上では「なりすまし」のアカウントが本当の「大河原啓介」として受け取られ、大河原さんの人格が悪い方向に独り歩きし続けたのだった。

 なりすまし犯はあまりに執拗で、大河原さんの写真を使った動画を作成し、海外のポルノサイトにアップしたり、大河原さんの名を騙り開設したブログでも、無関係の他人を攻撃したり、わいせつな言動を書き込んで、大河原さんをどこまでも貶めた。

「家族からも“こんな書き込みしてるのか?”と疑われたこともありました。病気だったし本当に大変で、社会復帰しようとしていた矢先の出来事でしたし…。成す術もなく、とにかくネットを見ないようにしてやり過ごし、やっと体調も良くなってきたところです」(大河原さん)

 なりすまし犯からネット上で、住所に関する情報を暴露されたり、近所の動画をアップされたこともあってか、大河原さん一家は引っ越しし、息をひそめて生活せざるを得なくなり、病気を克服しようとしていた大河原さん本人もまた、社会復帰への道を閉ざされた。

 普通の状態で、このように単純な「逆恨み」が発端の嫌がらせを受けた場合は、その相手と戦う気持ちがわいてくるモノだろう。ところが、すでに怒りの感情を抱かせないほど、被害者は「なりすまし」によって徹底的に痛めつけられている。

 ネットでの「なりすまし」そのものは、確かに犯罪ではない。IDやパスワードを盗用した場合や、「なりすまし」によって権利侵害を犯した場合にのみ、名誉毀損や業務妨害などの罪が発生する。大河原さんのように、明らかに人格を貶められたり、生活が困難になるほどの面倒ごとに見舞われれば、本来なら捜査と摘発の対象だろう。ところが現実には、彼の被害はいまも野放しだ。本来なら罰せられるべき「なりすまし」犯たちを、このまま放置してよいのか。

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