奄美群島は九州の南から台湾に連なる「琉球弧」の外縁をなし、沖縄や対馬とともに日本列島の防衛ラインを形成する。点在する旧日本軍の戦跡は、この島がいかに重要拠点だったかを示す。
奄美大島では現在、陸上自衛隊の駐屯地建設が急ピッチで進む。
防衛省は南西地域の防衛体制強化のため、島北東部の奄美市名瀬大熊に陸自の「奄美駐屯地(仮称)」、島南西部の瀬戸内町節子に同じく「瀬戸内分屯地(仮称)」を建設している。総額550億円を投じて大熊に中距離地対空ミサイル部隊など約350人、節子に地対艦ミサイル部隊など約210人を配置し、来年3月に部隊配備となる予定だ。
気がかりなのは、陸自の拡張と外国資本らによる土地買収のタイミングが一致することだ。別の地元住民はこんな不安を口にする。
「奄美が水面下で大熊や節子に自衛隊を誘致し始めた頃から、ちょうど外国資本による不動産買収が始まった。中国側が自衛隊の動向にあわせて、拠点づくりをしているのではないかと勘繰ってしまう」
「奇妙な一致」は土地購入ばかりでない。
現在、奄美大島では大型クルーズ船の寄港計画が進む。昨年8月に国土交通省が発表し、その後、島の西端に位置する瀬戸内町西古見が寄港候補地となった。伏線は2年前にあった。2016年、米大手クルーズ会社「ロイヤル・カリビアン・クルーズ」が本島北部の龍郷町に排水量22万t級の大型クルーズ船を寄港させ、乗員乗客あわせて7000人の中国人客を来島させる計画を持ち上げた。