「日本が食料自給率を守るには冷害に強い品種、暑さに強い品種、干ばつに強い品種など多様性が欠かせない。例えば『ひとめぼれ』は冷害に強い。1993年は冷夏で米が大凶作だったが、ひとめぼれだけは豊かな実を結び、日本人の胃袋を救った。
ところが種子法が改正され、さらにほぼ同時に施行された『農業競争力強化支援法』では、“銘柄が多すぎるから集約する”としている。おかげで自治体は多くの品種改良を続けることが難しくなるのではないか。
農家は毎年、民間から高価な種子を買わざるを得なくなるが、大手の種子製造は世界的な化学メーカーが行なっており、種子と合成肥料、農薬をセットで売り込む。日本の農業が外資など大資本に支配されてしまう」
種子法廃止を閣議決定した責任者は当時の山本有二・農水相と齋藤健・副大臣(その後、農水相)だが、もうひとり、種子法廃止に重要な役割を果たした政治家がいる。
自民党農林部会長として「農家が農協から高い農薬や肥料を買わされている」と主張し、農協改革の切り込み隊長役を務めた小泉進次郎・代議士だ。山田氏が語る。
「小泉さんの農協改革でJA全中は社団法人に格下げされ、官邸に屈してしまったために、種子法廃止反対運動の中心になることができなかったわけです。種子法改正を狙っていた官邸や農水省にうまくお先棒を担がされた」
その結果、農家は農協ではなく、今後は外資から高い種と農薬と肥料を買わされるのである。
※週刊ポスト2018年11月16日号