なかなか理解されないが、捕手の価値は数字だけでは判断できない。投手をリードしながら、相手チームの出方も読んでいかないといけない。優勝争いするチームと、常にBクラスのチームは捕手の重要性について認識が違う。
(日本シリーズMVPの)ソフトバンクの甲斐(拓也、26)は育成から這い上がってきた選手です。自分の特性である肩を磨いて成長してきたから、何を磨けば武器になるかがわかっている。そういう意味で捕手の甲斐が脚光を浴びたのはいいことだと思います。
監督は試合の中で捕手に任せるしかないんです。巨人では川上(哲治)監督が私にすべて任せてくれたように、私が西武の監督をしていた時は(当時の正捕手だった)伊東(勤)にすべて任せていました。伊東も任された以上に勉強をした。先ほど話したように、捕手の成績は数字に出ない部分の方が多い。監督はじめコーチがそれを理解してやらないといけない。それこそが捕手の拠り所になるんです。
指導者はただ、競争させればいいというものではない。重要なのは何を基準に競争させるかということ。打つ方なら数字に残るが、捕手の能力は数字に表われないことも多い。競争相手を呼んできただけで、レベルがあがるというものではない。巨人がそこをどう考えているかだと思う。
捕手に限らず、まず自前で育てる。これが野球の基本です。優秀な素質を持った選手がいても外から獲ってきた選手が優先的に使われる。そうなれば競争で勝ち取ったポジションでなくなってくる。これでは素質のある選手がどんどん埋もれます。
※週刊ポスト2018年11月23日号