ルポライターの安田峰俊氏

「募集に応じた人はいなかった。うちの店は実際には黒工を雇っていません」

 取材に対して、彼女はそう嘯いてみせた。店内のメニュー表には「台湾ラメン」「カレ炒飯」と怪しい日本語が殴り書きされ、中国人なのに漢字すらも極端にヘタである。中国の貧困層には文字を書く習慣が少ない人も多い。不法就労者と接点を持つ在日中国人もまた、社会の周縁にいる存在なのだろう。

「俺は黒工になる前は技能実習生だった。中国側のブローカーに『日本で実習生になれば3年間で35万元(約567万円)を稼げる』とウソを言われ、連中に100万円の仲介料を支払って15年に来日。千葉県の機械工場で働いていた」

 埼玉県西川口の中国人街で暮らす張岳(仮名、27歳)は取材にそう話した。江蘇省出身の彼は来日2年後の正月、買い物に行くフリをして技能実習先の会社を逃亡。不法就労者になった。

「虐待などは受けていなかった。逃げた理由は、中国側での説明と違い月収10万~15万円程度と賃金が安すぎたことと、一時帰国が認められなかったことだ」

 技能実習生は生活の管理が厳しく、休暇時の短期帰国が認められなかったことが大きな理由だったという。張は中国に妻と幼い娘がおり、実習期間中の3年間、1度も家族に会えないまま低賃金労働を強いられ続けることが不満だった。

 現在、「黒工」となった張は東京近郊の工事現場や解体現場、食品工場などで1週間~数か月程度の短期労働を繰り返し、技能実習生時代の倍となる月収20万~30万円を稼いでいる。仕事は『QQ』のコミュニティに投稿された求人に応募すればすぐに見つかるという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン