「東京五輪の関連施設の工事もある。ただ、20年の開催に間に合わせるために日程がタイトで激務らしく、俺は避けるようにしている」
西川口では在日中国人のブローカーを通じて、別名義で木造アパートを借り、仲間の黒工たち5人と暮らしている。隠れ家の写真を見せてもらうと、近年の中国の若者の価値観の変化を反映しているのか、室内は意外と清潔だった。
「中国国内でも、上海で宅配便の仕事をやれば月収1万元(約16万円)以上は稼げる。日本は物価も高く、黒工になるのは決して得じゃない。俺たちは技能実習先を逃げ出したから、仕方なくやっている」(張)
【PROFILE】安田峰俊(やすだ・みねとし)1982年滋賀県生まれ。ルポライター。立命館大学文学部卒業後、広島大学大学院文学研究科修了。最新刊に『さいはての中国』(小学館新書)がある。
※SAPIO2018年11・12月号