奥山:校長先生、教頭先生、先生たちと入学前から何度も打ち合わせを重ねましたが、心配していた以上に子どもたちはなんのこともなく、同じ仲間として一緒に過ごしてくれています。大人たちの方が心配して気をもんでいました。
もちろん、できないこともあります。例えば運動会の時、団体行動で輪になって、本来いなければいけない位置になかなか行けなかったりするんです。
でも、そんな時、周りの子が誘導してくれたり、先生の助けを借りたりしてなんとかやっています。できないことはあるけど、バカにしたりとかではなくて、「いろんなことができない美良生くん」をそのまま受け入れてくれているという感じです。
なので、本人も悲観することなく、学校に楽しんで行っています。子どもが笑顔で過ごしてくれる環境ならば、どこであっても正解だと思っています。
【プロフィール】
◆奥山佳恵さん/1974年、東京生まれ。2001年に結婚。2002年に長男・空良(そら)くんを、2011年に次男・美良生(みらい)くんを出産。美良生くんが生後1か月半の時、ダウン症と告げられる。著書に、美良生くんの育児日記を公開した、ドキュメンタリーエッセイ『生きてるだけで100点満点!』(ワニブックス刊)がある。
◆松永正訓(まつなが・ただし)さん/1961年、東京生まれ。「松永クリニック小児科・小児外科」(千葉県千葉市)院長。2013年に『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』(小学館刊)で第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。読売新聞の医療・介護・健康情報サイト「yomiDr.(ヨミドクター)」で連載を持つなど、命の尊厳をテーマとした記事や作品が各所で好評。
『発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年』
松永正訓・著/中央公論新社刊
幼児教育のプロとして活躍する母・立石美津子さん(56才)が授かった息子・勇太くん(仮名)は自閉症児。17才の時点で知能指数(IQ)が37、精神年齢は5才8か月。だが、一方で非凡な才能を持ち、例えば、水洗トイレで流した水の音を聞くと、その便器のメーカーと型番を言い当てられたりする。母は、子育てにおける各所で、周囲のいろいろな人との間で、「理想の子育て」とのギャップに悩む。戸惑い、絶望し、怒り、悲しみ、疲れ…わが子が“普通”でないことを母はどう受け入れ、そして、どんな感情を抱くことができたのか──障害の有無にかかわらず、子育てに悩むかたにお薦めしたい、読後に力をもらえる一冊。小学館ノンフィクション大賞受賞作家による渾身のルポルタージュ。
※女性セブン2018年12月13日号