すでに私は、今年の春に政府が来年4月をめどに外国人労働者向けの「特定技能」という新たな在留資格を作ると報じられた時点で、「単に人手不足を補うためだけの極めて場当たり的、かつ、なし崩し的な政策」「人口減少期に突入している日本の労働力確保には構造的な解決策が必要、という根本的な視点が抜けている」と批判したが、この問題は国家百年の計で熟考を重ねなければならないものである。
にもかかわらず、いい加減な受け入れ制度や見込み人数で短兵急に事を進める政府も、それを批判したいがために受け入れそのものに反対する野党も、目先の議論しかしていない。
今の与野党の議論で根本的に抜け落ちているのは、「これから日本をどんな国にしたいのか」「日本人の条件とは何か」という本質的な問題である。そしてそれは、やはり私が『新・大前研一レポート』で25年前から主張しているように、全国一律の国民データベース(DB)を構築し、「日本人」がすべての行政サービスを、いつでもどこでも簡単に受けられるようにすることが大前提となる。
これまで何度も紹介してきたように、国民DBを構築した「eガバメント(電子政府)」のエストニアは、スマホ1台で何でもできる。世界のどこにいても「エストニア国民」として権利を行使することができ、選挙の投票や納税、年金、健康保険証、運転免許証、国家資格などの手続きから公共料金の支払いといったことまで可能である。