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2018.12.07 11:00  女性セブン

変容する火葬場 高い煙突は消え、寂しい印象は過去のもの

◆全国各地から見学者が

 この火葬場らしからぬ火葬場「川口市めぐりの森」を設計したのは、伊東豊雄さんだ。伊東さんが火葬場の設計を手がけたのは、ここが2例目で、2006年に完成した岐阜県各務原(かかみがはら)市の「瞑想の森 市営斎場」があると知り、そちらへも足をのばした。

 各務原市は、岐阜県南部の人口約15万人の町。「瞑想の森 市営斎場」は市街地から3kmほどの地にある。最寄りのJR高山本線那加駅から乗ったタクシーの運転手さんが「全国各地、いや海外からも見学の方が見えます。特に観光資源のない中、市営斎場は我々市民の誇りです」と話したのも無理はない。人里を離れ、工業団地の行き止まりまで行くと、ぱっと視界が開け、里山が目に入ったかと思うと、その手前にやはり白く波打つ屋根が見えた。

 リゾートホテルのようだ。建物のすぐ前には、夏にはハスの花が乱れ咲く池が広がり、鯉が泳いでいる。池伝いの緩やかな坂道の先は、幅の広い谷筋で、市営の墓地公園が広がっているのが望めた。

「昔から、墓地と火葬場があった地です。池は、もともと農業用水池でした。約8万5000平方メートルに及ぶ墓地公園全体の景観設計をランドスケープ・アーキテクトの石川幹子先生(東京大学名誉教授、中央大学教授)に依頼したんです。その際に、墓地の片隅に建っていた火葬場が老朽化していたため、建て替えを伊東先生にお願いしたという経緯です」

 と、各務原市市民生活部環境政策課の井上裕二さんが説明してくれた。

 建物面積が約2300平方メートルで、火葬炉は6基。「川口市めぐりの森」より相当小さいが、外光を取り込む広い窓や、曲線を帯びた白い天井など館内の趣きは似ている。

 独立した「告別室」と「収骨室」がそれぞれ2室あり、会葬者の動線は告別室、炉前ホール、待合室、収骨室となるが、すべての箇所とも清々しい。炉前ホールは、木の枝の模様が施された壁にしか見えないところに、火葬炉の扉が潜んでいた。扉が6つ並んでいるが、「横一列」の光景ではない。一角に、4年前までグランドピアノが置かれていたらしい。

「市民の方々から、休館日にここでコンサートをできないかという声があがり、地元の演奏家を招いてクラシックコンサートを50回以上開きました。毎回50人ほどがいらっしゃり、好評でした」(井上さん)

「運営に手が回らない」状況となったため、コンサートの開催は終了したが、かつて忌避されがちだったはずの火葬場と市民の距離がこんなに近づいていたとは驚きだ。

◆ネパールでの光景を再現

 設計した伊東豊雄さんに会いに行った。この秋の文化功労者選出や、新国立競技場のデザインの最終選考に残り、話題になったことが記憶に新しいが、鉄骨を組み合わせたチューブ状の柱から成る「せんだいメディアテーク(文化複合施設)」や、かつてのサーカス小屋かのような屋根の「座・高円寺(劇場)」など、公共施設に新風を送り込む設計でも知られる建築家だ。各務原市の「瞑想の森 市営斎場」も「川口市めぐりの森」も、どういう発想からの設計だったのか。

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