国内

変容する火葬場 高い煙突は消え、寂しい印象は過去のもの

窓からは、樹木や水辺の光景を眺めることができる「川口めぐりの森」

 かつてのイメージを覆すほどに変化している昨今の火葬場。その新潮流を『いまどきの納骨堂』(小学館)の著者であるノンフィクションライターの井上理津子さんがレポートする。

 * * *
 今、お墓事情が変化している。うら寂しい寺の境内や郊外の霊園に立つ墓石から、明るい室内の納骨堂へ──。骨壷を自動搬送する立体駐車場型や、仏壇型、ロッカー型など新しいスタイルの納骨堂が次々と誕生し、利用者に歓迎される。そんな流れに拍車がかかっている様を取材し、このほど『いまどきの納骨堂』(小学館)を著したが、人のエンディングに関して、変化が訪れているのはお墓だけではなかった。納骨の前に必要な場である火葬場にも変化が起きていた。うら寂しい雰囲気から明るい情調へ、お墓と歩を共にするかのようなシフトが始まっている。

◆公園の光景に溶け込む建物

 埼玉県川口市の中央。赤山歴史自然公園(愛称イイナパーク川口)には、大型の遊具や川口の歴史・産業を紹介する資料館があり、この日も、子供たちを遊ばせる若いママたちが幾人もいた。そのうちの1人(33才)に、「あの建物をご存じですか?」と声をかけると、「はい?」と聞き返された。

「ほら、リズミカルに大きく波打つダークブラウンの屋根が見えるでしょう?」。池の向こうを指した。

「…そういえば、そうですね」と、その人。
「火葬場なんですよ」
「あら、そうなんですか。知らなかった」

 まったく意に介さない様子だ。

 私が指した建物の側面はガラス張りで、屋根の上の中央には、やはりダークブラウンの立方体の建物が載っている。目をこらすと屋上に樹木が覗いているのも分かる。遊び場から少し離れた地には、デジカメを手にした男性(57才)がいて、こう言った。

「エコなミュージアムみたい。池に映るシルエットもきれいで、水上に浮いているような建物ですね」

 彼は、市の広報誌に載っていたので、見に来たとのことで、「いずれ僕だってお世話になるんだから、どんなところか気になるじゃないですか」と微笑み、シャッターを切った。

 公園の光景に溶け込んでいるため、関心のない人の目にはとまらないが、少し意識すると「エコなミュージアム」のように見えるのは、4月に供用開始となった「川口市めぐりの森」という名の火葬場である。

◆戦後3度目の建設ラッシュ

 子供たちが歓声をあげる遊び場と、非日常の世界である火葬場に親和性がないことへの配慮だろうか。公園から直接にアクセスできないが、火葬場もイイナパーク川口の一部のように見える。すぐ近くを通る首都高速道路川口線の川口パーキングエリアが、2年後には首都高初のハイウェイオアシスに拡大され、展望テラスが設けられる予定のため、「公園の横に火葬場がある」という認知は今後進むに違いない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン