高速の高架下を迂回し、「川口市めぐりの森」の正面入り口に着いた。波打つ屋根の正面側は白く、それを支える柱も同じく白でやわらかな曲線を描き、朝顔を横から見たようなフォルムである。建物の中に入ると、白い天井にダークブラウンの壁。洗練された空間が広がっている。

 厚生労働省の衛生行政報告(2016年度)では、全国の火葬場の総数は、4181か所である。そのうち、「1年以内に稼働実績があり、恒常的に使用している火葬場」の数は1432。その差、2749は、同省行政報告統計室の担当者によると、役目を終えたが廃業届が出ていない施設だそうだ。「共同墓地等に“飾り”のように放置された火葬施設」が散見される可能性が高いらしい。

 戦後、火葬場の建設ラッシュが2度あったと、葬送ジャーナリストの碑文谷創さんは言う。1度目は1950~1960年代で、火葬率が60%を超えた。施設の耐久年である約30年を経て、2度目の建設ラッシュがやってきたのが1980~1990年代。その頃に、火葬率が90%を超えたという。

 それから、さらに30年が経とうとする近年、火葬率はほぼ100%となった。1980~1990年代に建てられた火葬場の老朽化と、都市部では「多死社会」の到来にともない、建て替えが盛んに行われているのである。NPO法人日本環境斎苑協会主任研究員の森山雄嗣さんの調査によると、2014年から2018年までの5年間に新築された火葬場が、全国に63か所を数える。

「高い煙突はとっくに消え、寂しいイメージはすっかり過去のものとなりました。経営主体の財政にもよりますが、コンクリート打ちっ放しなど、その時どきの建築の流行が火葬場にも反映され、建物のモダン化が進んでいます。また、指定管理者制度による運営の外部委託などによって、利用者目線が意識されるようになってきました」(碑文谷さん)

 待機日数が長期化している、遺骨の引き取りを拒否する人が増えている──。近頃、そんな報道がやたら目につく火葬場だが、一方で、ハード面、ソフト面とも変容してきているのである。

◆高い天井には間接照明

 川口市は人口約60万人を擁すが、これまで火葬施設がなかったから、「川口市めぐりの森」は新設されたものだ。火葬場は約2ヘクタールで、総工費は約56億円。

「供用開始に先立ち、市民内覧会を開くと、3000人以上がお越しになり、『やっと出来た』『火葬場のイメージが変わった』などという声を聞きました」と、川口市保健部保健総務課の加来竜馬さん。

 ここは、私がこれまで訪れてきた各地の火葬場とずいぶん違う。外観ばかりか館内も斬新だ。

 霊柩車で着いた棺は、エントランスで最新の電動棺台車に載せられ、スタッフによって「告別収骨室」へと運ばれる。

「ここです」と、加来さんに案内された「告別収骨室」は、天井が高く、40平方メートルほどあろうか。壁三方がダークブラウンの木目調、正面はトラバーチンという大理石仕様だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン