一方、ファーウェイを巡る事態が急転しているいま、守勢に回り存在感が薄くなっていた台湾のエイスースには、嫌中派や嫌韓派を取り込むことを含めて巻き返しのチャンスになる。また、キャリアとの結びつきが強いため、これまでSIMフリー端末をあまり出していないソニーやシャープなど、日本のメーカーにも挽回の機会到来だ。
これまで低価格帯、中価格帯、高価格帯すべてのゾーンでスマホの品揃えをし、一網打尽で世界でのシェアを高めてきたファーウェイだが、「官民一体で中国政府が最大限支援してきたからこそ、他社の追随を許さない驚異的な価格性能比の商品が送り出せてきた」といった指摘も多かった。米国主導のファーウェイ製品締め出しのうねりが今後さらに高まると、先行きはかなり不透明だ。
「安くても高機能」、あるいは「高いけど性能比ではリーズナブル」とファーウェイのスマホを評価してきた日本の消費者は、スマホ決済のシーンが増え、何でもスマホですべて完結する人も増えている状況下では、様々なリスク不安から、ファーウェイのスマホを購入候補のリストから外したり、違うメーカーの端末に買い替えたりする人も増えるだろう。
ただし、個人情報漏洩等のリスクはGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などの米国系企業でも同じこと。基本的には消費者個々人でどう判断するかになる。
NTTドコモの「ファーウェイP20 Pro」のテレビCMはいまも流れ、前述したMate 20 ProはSIMフリー版だけでなくソフトバンクからも発売され、同機の廉価版、「Mate 20 lite」はビックカメラの専売モデル(税抜き3万9800円/12月9日時点)になっている。それだけ支持を上げてきたファーウェイだが、事態が風雲急を告げる中、今後の趨勢によっては販売減だけでなく、日本市場から撤収の可能性も出てくるかもしれない。
ただし、ファーウェイのスマホにはカメラ等々で、ソニーをはじめとした企業がサプライヤーとして多数、関わってもいる。部品メーカーによっては、ファーウェイ向けのビジネスがもしストップしてしまったら、存続の危機に立たされるところが出てくる可能性もある。米中の今後の攻防によっては、その影響は甚大だ。
●文/河野圭祐(ジャーナリスト)