ライフ

【著者に訊け】堀江敏幸氏 贅沢な書評集『傍らにいた人』

『傍らにいた人』を書いた堀江敏幸氏

【著者に訊け】堀江敏幸氏/『傍らにいた人』/日本経済新聞出版社/2000円+税

 朧げな記憶の中に浮かぶ数々の文学作品と、それを時を経て読み返す作家との、これは行くあての知れない対話にして、一篇の小説といってもいい書評集である。

 堀江敏幸著『傍らにいた人』は、約1年に亘る日経新聞での連載をまとめたもの。例えば國木田独歩『忘れえぬ人々』に言及した冒頭の一篇「傍点のある風景」にこんな一文がある。

〈目の前をあっさり素どおりして気にもとめていなかった人の姿が、なにかの拍子にふとよみがえってくることがある〉〈思い出されてはじめて、なるほどその折の景色のなかに目立たない傍点が打たれていたのだと気づかされるような影たちと、何度も遭遇してきた。ただし、現実世界ではなく、書物の頁の風景のなかで〉

 そうした影たちと再会すべく、独歩から安岡章太郎、内田百間や藤村や芥川へと、氏の〈連想〉と再読の旅は微かな残像を元に頼りなく進む。その受け身で芋づる式な手つきは、自身の創作姿勢や文学という営みそのものとも深く関わっていた。現在、早大文学学術院で文芸演習の講義も受け持ち、「書くために読め」と説く氏は、〈連想というものはつねに足し算であって、引き返す術がない〉と書く。

「何のインプットもなしに自分だけの言葉が湧きだすなんて幻想にすぎません。先人の仕事を二次的、三次的に〈変奏〉してきたのが文学の歴史だと思います。その土台にあるのが、読むことです。ただ、僕の場合はそれが系統的にならない。書物と書物が芋づる式に繋がっていく。冒頭を独歩で始めたからこの並びになっているわけで、別の作品から始めていたら全く別の色合いに染まったでしょうね。連想の流れに一貫して受け身なのは、生来の性格です(笑い)」

関連記事

トピックス

山下市郎容疑者(41)が犯行の理由としている”メッセージの内容”とはどんなものだったのか──
「『包丁持ってこい、ぶっ殺してやる!』と…」山下市郎容疑者が見せたガールズバー店員・伊藤凛さんへの”激しい憤り“と、“バー出禁事件”「キレて暴れて女の子に暴言」【浜松市2人刺殺】
NEWSポストセブン
WEST.中間淳太(37)に熱愛が発覚、お相手は“バスり”ダンスお姉さんだ
《熱愛ツーショット》WEST.中間淳太(37)に“激バズダンスお姉さん”が向けた“恋するさわやか笑顔”「ほぼ同棲状態でもファンを気遣い時間差デート」
NEWSポストセブン
アパートで”要注意人物”扱いだった山下市郎容疑者(41)。男が起こした”暴力沙汰”とは──
《オラオラB系服にビッシリ入れ墨 》「『オマエが避けろよ!』と首根っこを…」“トラブルメーカー”だった山下市郎容疑者が起こした“暴力トラブル”【浜松市ガールズバー店員刺殺事件】
NEWSポストセブン
4月は甲斐拓也(左)を評価していた阿部慎之助監督だが…
《巨人・阿部監督を悩ませる正捕手問題》15億円で獲得した甲斐拓也の出番減少、投手陣は相次いで他の捕手への絶賛 達川光男氏は「甲斐は繊細なんですよね」と現状分析
週刊ポスト
事件に巻き込まれた竹内朋香さん(27)の夫が取材に思いを明かした
【独自】「死んだら終わりなんだよ!」「妻が殺される理由なんてない」“両手ナイフ男”に襲われたガールズバー店長・竹内朋香さんの夫が怒りの告白「容疑者と飲んだこともあるよ」
NEWSポストセブン
WEST.中間淳太(37)に熱愛が発覚、お相手は“バスり”ダンスお姉さんだ(右・Instagramより)
《スクープ》“夢の国のジュンタ”に熱愛発覚! WEST.中間淳太(37)が“激バズダンスお姉さん”と育む真剣交際「“第2の故郷”台湾へも旅行」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《左耳に2つのピアスが》地元メディアが「真美子さん」のディープフェイク映像を公開、大谷は「妻の露出に気を使う」スタンス…関係者は「驚きました」
NEWSポストセブン
防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
「服のはだけた女性がビクビクと痙攣して…」防犯カメラが捉えた“両手ナイフ男”の逮捕劇と、〈浜松一飲めるガールズバー〉から失われた日常【浜松市ガールズバー店員刺殺】
NEWSポストセブン
和久井学被告と、当時25歳だった元キャバクラ店経営者の女性・Aさん
【新宿タワマン殺人・初公判】「オフ会でBBQ、2人でお台場デートにも…」和久井学被告の弁護人が主張した25歳被害女性の「振る舞い」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト