もう一つ、最近、目につくのがコッペパンの専門店です。アメリカのホットドック用パンがその源流だと言われていますが、日本独自に発展したパンです。第二次世界大戦後は、学校給食用として大量に作られ、「昭和の思い出」的な取り扱われ方をしてきました。
ところがこの5年ほどで、急激にコッペパンの専門店があちこちに開業しています。いわゆる食事パンという分類に入り、今までは様々な食材が挟み込まれ、手軽に食べられるパンとして位置づけられてきました。
新規出店しているコッペパン専門店は、いずれもおしゃれな店造りと多種多様な具材を用意してお客を迎えています。食事パンとしてではなく、スイーツ系のコッペパンも多く、生クリームやフルーツなどを挟んだものなども見られます。
「コッペパンというとかわいい感じがするし、挟んでいるものがいろいろあってインスタ映えするのも魅力」と、30歳代の会社員女性は話します。「家族に買って帰ったり、友達とかが集まる時に何種類か買っていくと喜ばれますよ。ケーキ代わりにもなるし」
食パンにしろ、コッペパンにしろ、従来は自宅用だったものが、高級感や特別感、限定感を帯びることで、土産や贈答品としても使えるようになってきているのです。
日本のスイーツの2017年の市場規模(日本食糧新聞より)は1兆5300億円、ベーカリーは4000億円弱と推定されています。市場規模はここ数年横ばい状態になっていますが、その原因としては2人以上の世帯における菓子類の消費額が年額8万円程度で停滞していることが影響しています。
こうした成熟した市場の中で、コンビニスイーツの急成長と、食パンやコッペパンなどベーカリー部門のスイーツへの進出が、中小企業や個人商店の多いケーキなど洋菓子の市場を侵食していると言えるでしょう。