芸能

落語家・橘家圓太郎 56歳の今、円熟の境地に達しつつある

橘家圓太郎の魅力を解説

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、東京マラソンを完走した足で高座へ直行したこともある落語会の鉄人・橘家圓太郎の円熟について、お届けする。

 * * *
 11月13日、日本橋社会教育会館で橘家圓太郎の独演会「圓太郎ばなし」を観た。圓太郎は春風亭小朝の総領弟子。トライアスロンで鍛えた落語界随一のアスリートだ。

 1席目は大師匠の五代目柳朝も得意とした『蛙茶番』。オッチョコチョイな半公が巻き起こす珍騒動を生き生きと描いて爆笑を呼ぶ上手さはさすがだ。こういう噺では圓太郎の持つ「フラ」が全開になる。定吉の可愛さは特筆モノ。

 続いてゲストの柳家三三。ここ数年、三三の高座からは肩の力が抜け、滑稽噺の面白さが数段アップしている。この日演じた『元犬』も、全編にオリジナル演出が(しかもごく自然に)施されていて、実に面白い。『元犬』をこんなに新鮮に聴けるのは兼好以来だ。「女中のお清も元は犬だった」というオチもいい。

 余談だが、この6日前には「粋歌の新作コレクション」でゲストの三三が林家彦いちの『掛け声指南』を演るのを観て、大いに笑った。白鳥作品もそうだが、ああいうバカバカしい噺を演る三三が僕は好きだ。

 後半は圓太郎が再び高座に上がって『富久』をみっちりと演じた。

 この噺は初代三遊亭圓左から三代目三遊亭圓馬を経て八代目文楽へ至る系統、初代三遊亭圓右から五代目志ん生に至る系統、三代目小さんから二代目談洲楼燕枝を経て八代目三笑亭可楽や五代目小さんに至る系統の三系統で伝承されてきた演目で、それぞれ演出が微妙に異なる。

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