つまりこういうことだった。陽二さんは、美人だけどちょっと地味めな若い女の子が好きなのだと。そういう子が健気に頑張っている姿にホレるのだと。だから麻衣子さんを好きになったのに、付き合っているうちに、そうじゃなくなっていた、というのが陽二さんの言い分だった。
「私はキツくなったし、派手になった、と言われました。いろいろ話し合っているうちに、この人はもう冷めたんだと悟りました。愕然としましたね。浮気を知ったとき以上に」
◆冴えない女から脱出した先に訪れた「別れ」
実際、麻衣子さんは変わったのか? 彼女自身も「変わったと思う」と認めた。だがそれは、陽二さんのために「変わろうと努力した」結果だった。
「彼はオープンな人で、友人同士の集まりや、仕事仲間との飲み会に、よく私を連れていってくれたんです。彼のテリトリーに入れてもらえること自体はとても嬉しかったんですが、行くと、どうしても、劣等感を覚えてしまった。彼の女友達は、美人でオシャレで、世慣れた感じの人が多いように見えたから。それに比べて私は、やぼったい、冴えない女だなという気がして」
年齢差もあったのだろう。あるいは、マスコミで働く陽二さんの世界がキラキラしたものに映ったのかもしれない。麻衣子さんはライバル心を覚え、持ち前の努力家を発揮して、「彼に釣り合う彼女になろうと」と、頑張った。
それほど興味のなかったファッションも、女性誌を読んで勉強し、美容院も変えた。陽二さんの女友達には、「麻衣子ちゃん、陽二と付き合って垢抜けたね」と言われたし、会社の同僚には「彼氏ができて綺麗になったね」と言われて喜んでいたが、その変化を、当の陽二さんが好ましくないと思っていたことに、露ほども気づかなかった。