実際に掲示板などに「まとめやすい」ネタのスレッドを立ち上げ、それをそのまま自身のサイトにまとめて記事を作っていたS氏。その過程で「自らネタを作る」手法を思いついたと証言する。
「ネットに書き込まれていた情報を転載しただけ」としつつ、個人への誹謗中傷のコメントばかりを掲載していた、とあるまとめサイト作成者が訴えられた裁判において、昨年末、最高裁はサイト作成者側に賠償を命じる判決を下したケースがある。自分が書き込んだ言葉でなくとも、ある方針に基づいてまとめて掲載すれば、まとめた人物にも責任が発生すると法的に認められたのだ。だが、そもそも「ネットの書き込み」そのものが作成者側の自作自演によるものであれば、まとめただけより悪質性はより際立っているではないか。
「最近は書き込みだけではありません。とあるまとめサイトでは“日本に否定的な人物”というユーザー像のツイッターアカウントを複数開設し、それらの書き込みをサイトでまとめてニュースにしています。これらはサイトの運営者や、時にはライターによって行われておりネタを無限に作ることができる…。韓国人や中国人風の名前のアカウントを作り、日本の悪口をツイートすると、それが“反日外国人の意見”としてニュースになる、という流れです」(S氏)
S氏がこのように指摘するアカウントは、現在も複数確認できた。確かに一見すると「反日的な外国人」による日本への悪口の羅列に見えなくもない。しかし、ニュースを意図的にミスリードしていたり、個人への誹謗中傷、具体的に言えば右派系まとめサイトでウケそうなネタばかりを選んでつぶやいており、意図的に煽情的な言葉を使って発信しているように感じられる。
これら「なりすましアカウント」の一つなど、設定では「日本に住む在日朝鮮人」だったが、アカウントのアーカイブには「東京在住の日本人」であることがわかる書き込みや、筆者も寄稿していたことがある保守系論壇誌のツイートのリツイートなども見つかった。
各メディアがファクトチェック班を立ち上げるなど世界中で対策が叫ばれる中、フェイクニュースやその作り手たちは、次のフェーズに移行したと言えるだろう。ネットの登場で「様々な情報」に誰でも気軽にアクセスできるようになった反面、ますます「真実」が見えづらくなってしまった“高度情報化社会”が生まれたことは、皮肉というほかない。