国内

児童相談所設立、治安の悪化が起こる可能性は低いとの見解

2015年度 児相に寄せられた相談種類別対応件数

 年間13万3778件という過去最多の虐待件数をよそに、児童相談所の建設は反対された。東京・南青山、そして、大阪でも同様の反対も起こっていた…。

 2017年11月、東京・南青山の一角にあった約1000坪の国有地を港区が約72憶円で購入した。さらに約32億円をかけて「港区子ども家庭総合支援センター(仮称)」を建設し2021年4月の開設を目指す、一大プロジェクトがあることを発表した。

 施設には児童相談所のほか、子育て相談などができる「子ども家庭支援センター」や、養育が困難な母子家庭が入居する「母子生活支援施設」が併設予定である。

 しかし、それから約1年後の2018年10月、施設建設のために港区が開いた説明会で、反対派の住民が区の担当者に猛然と噛みついたのだ。この様子がテレビなどのニュースで取りざたされた。
 
 さらに2016年、大阪市北区にあるタワーマンション内に「北部こども相談センター」(児相)を開設する計画が持ち上がった。現場は梅田からほど近くて交通の便がよく、有名芸能人も居住する高級マンションである。

 大阪市は政令指定都市のなかで虐待相談件数が最も多いにもかかわらず、市内に児相は2か所しかなかった。そこで3か所目として、計画が出されたのだ。東京でも、大阪でも、反対派住民の大きな反対理由は、児相設立による「治安の悪化」と「資産価値の低下」だ。

 だが専門家は、いずれの要因も「現実に起こる可能性は少ない」と指摘する。元東京都児相相談員で心理司の山脇由貴子さんはこう語る。

「非行の子供について心配する人が多いのですが、一時保護された子供たちが児相で過ごすのは原則2か月のみで、その後は児童自立支援施設や児童養護施設などに送られます。 また、基本的に居住スペースには鍵がかけられているので、脱走は現実的に不可能です」

 保護された子供の心情を考慮しても、治安悪化は考えにくいと山脇さんは続ける。

「非行で保護された子供たちは、早く家に帰って仲間に会うためには、施設でおとなしくすべきだと知っています。下手に脱走したり暴れたりしたら、家庭裁判所送りになることもわかっている。児相による一時保護には非行を抑止する絶大な効果があり、非行に走った子供や虐待された子供を放置する方が、よほど地域の治安が悪化するのです」

 児相の一時保護所で過ごした経験を持つ漫画家の上野りゅうじんさん(38才)が、当事者としての意見を述べる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の打ち上げに参加したベッキー
《ザックリ背面ジッパーつきドレス着用》ベッキー、大河ドラマの打ち上げに際立つ服装で参加して関係者と話し込む「充実した日々」
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
雅子さまが三重県をご訪問(共同通信社)
《お洒落とは》フェラガモ歴30年の雅子さま、三重県ご訪問でお持ちの愛用バッグに込められた“美学” 愛子さまにも受け継がれる「サステナブルの心」
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
マレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」(時事通信フォト)
人気ラッパー・ネームウィーが“ナースの女神”殺人事件関与疑惑で当局が拘束、過去には日本人セクシー女優との過激MVも制作《エクスタシー所持で逮捕も》
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン