つまり、大坂のことは選手として超一流という点は押さえつつも、「天真爛漫で素直なかわいい子」と扱い、さらには「決して上手とはいえない日本語から珍発言を繰り出す」芸能人としての枠にハメようとしている。
メディアの狙いには、日本語で喋らせることによって何か一つの流行語を作り出したいというものもあるだろう。「ちょっと疲れたけどぜんぜんOKネ」みたいな発言を大坂ならしそうだが、もしこう発言した場合、「職場で『ぜんぜんOKネ』を使う従業員が増加中」みたいな企画が出てきそうである。大坂は今回英語で答えたが、テニスとは関係のない部分で「おいしい」発言を取りたいと考える意図はすでに見抜かれているのかも。
それにしても、「タレント性がある」「画(え)的においしい」がいかにメディアが求めるものかがよく分かるのが、バドミントン選手と大坂の扱いの差である。男子シングルスで桃田賢斗は世界ランキング1位で、女子ダブルスのトップ3はいずれも日本ペアだ。桃田は過去に賭博関連不祥事があり謹慎経験があるとはいえ、あまりに注目度が低過ぎないか。あと、美形ペアともてはやされた小椋久美子と潮田玲子の「オグシオペア」は世界ランクの最高位は6位だったが、現在のトップ3組よりも明らかに大きく取り上げられていた。
スポーツをバラエティー番組化したいメディアの意図はもう世間ではかなり嫌われている。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など
※週刊ポスト2019年2月15・22日号