ファンであることとメディアにいることは両立できるものか。高校時代から田原俊彦に興味を持ち始め、24年間追い続けた結果、昨年『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)を書き上げるに至った芸能研究家でライターの岡野誠氏が話す。
「取材をする時、対象者についてどのくらいの知識を持っているかは重要です。物事に対する着眼点や分析力は、知識量にある程度比例する。たいして調べもせず、ありきたりな問答で終わる無味乾燥なインタビューや記者会見は往々にしてあります。その中で、ファンであれば、他のマスコミ陣が知らないような情報を持っていたり、長年追い続けてきたりしたからこその分析ができるケースもある。独自の視点を生み出せるため、ファンであることは強みにさえなると思います。
熱意や愛情の感じられない指摘や物言いは、取材対象者に単なる批判と受け止められる危険性を孕んでいる。逆説的にいえば、『好き』であることで『批評』が成立しやすくなる面もあるかもしれない。ただし、感情が客観的事実を上回ってはいけない。感情があったうえで、膨大な事実を元にした冷静な分析を積み重ねた時、初めて効果的に取材対象者に接することができるようになるのではないでしょうか」(岡野氏・以下同)
過去の記者会見報道を振り返っても、質問者である記者やアナウンサーの立ち位置がこれほどクローズアップされたケースは珍しい。
「単独インタビューなら1人で何問も質問できるが、会見では1人1問程度しかできない。1対1の取材では聞き手自身が1人で硬軟織り交ぜて、全体のバランスを調整できる。しかし、何人もの記者が出席する会見は全員のチームプレーでバランスを取るしかない。そういう意味で、『無責任』という言葉の含まれた厳しめに思える質問も、青木アナのようなファン目線の優しい問い掛けも、どちらも必要なパーツだったと言える。会場にいる記者のなかには全体のバランスを考えて質問している人もいるはず。全体的に柔らかい質問が目立ちましたが、特定の発言だけを切り取って批判するのはかわいそうだと思います」