悪路に強い現行パジェロの基本性能も素晴らしいが…
一方、以前に益子修社長(現会長兼CEO)が発した「もはやパジェロを作り続けられる状況ではない」というのも無理からぬところ。グローバルでも月産数百台という規模のパジェロをモデルチェンジする余力は今の三菱にはない。
現行パジェロも、旧型のシステムをほぼ丸ごと引き継ぐことで辛うじて出せたようなものだ。筆者は2年ほど前、現行パジェロのターボディーゼルを500kmほど走らせてみた。基本性能はデビュー10年以上を経てもなお素晴らしいものがあった一方、安全装備の欠如、エンジンノイズの大きさ、高額モデルに要求される質感などは現代の第一線級からは遠くかけはなれてしまっていた。これ以上の延命は難しいというのは確かだ。
パジェロを作り続けるかわりに、オフロード性能は十分に持ち合わせているパジェロスポーツを先進国市場に投入するというのは、三菱にとってはなかなかの妙手である。
前述のように今は世界的なSUVブームだが、その多くは乗用車ベースのモデル。コストが安いことと、オンロード性能を確保するにはそのほうが有利というのが主な理由である。
パジェロスポーツのようなフレーム構造を基本とするクロスカントリータイプはオンロード性能ではそれらのモデルに劣る傾向があるため、少数派になっている。日本メーカーでは日産自動車が日本市場でのフレームモデルの販売をやめ、今では三菱および「ランドクルーザー」「ランドクルーザープラド」を擁するトヨタの2社のみである。
見方を変えると、これは年産120万台規模の三菱にとっては、格好のニッチマーケットである。パジェロスポーツくらいのサイズ感のクロスカントリー4×4はランドクルーザープラドの1モデルしかなく、ヘビーデューティ志向のユーザーにとっては商品不足の状態が続いている。
幸いにして、パジェロスポーツはサイズ的に日本で使うのに向いている。全幅は1815mmと、今どきのSUVとしては結構狭く、細い道でも取り回しはそれほど悪くないことが予想される。全長も4.7m台と、中型SUV並みだ。
昨年夏のイギリスに続き、パジェロスポーツを日本に投入できれば、三菱にとって得られるものはいくつもある。