大動脈や頸動脈が硬くなることに加え、毛細血管の減少も、血管年齢の引き上げにつながる。米ハーバード大学医学部客員教授で医師の根来秀行さんが解説する。
「実は、全身の血管の総量のうち99%を占めるのが毛細血管です。体の末端まで栄養素や酸素を運び、老廃物や二酸化炭素を排出する大事な役割を果たしますが、60代になるとその量が4割も減ってしまう。その結果、栄養素が全身に行き渡らないうえ、老廃物が沈殿し、血管が劣化してしまうことがわかっています」
血管の壁が硬くなり、毛細血管が減ってしまえば、心臓病や脳卒中の発症リスクが跳ね上がる。
「血液の壁が柔らかく、しなやかであれば心臓から送り出される血液の勢いをクッションのように受け止めてくれる。しかし、血管が硬くなるとその働きが弱くなる。血管年齢が高い人の脳の組織は、例えて言えば、ボクサーがジャブを繰り返し受けているような感じでしょうか」(菅原さん)
なんとも恐ろしい話である。
「実際、日本人の4人に1人が心筋梗塞や脳梗塞などの血管系の病気で亡くなっている。これはがんに次いで多い数です」(島田さん)
そればかりか血管の老化は、がんや認知症にも関係があるとされている。
「血管年齢が高いということは、血管だけでなく体の中の老化が進んでいるということを示します。老化が進めばそれだけがんや認知症になりやすい。血管が老化した結果、脳の細胞が正常に動かなくなり、認知症を発症したケースもあります」(島田さん)
つまり、人間を死に導く原因のほとんどに「血管年齢」がかかわっていることになる。
だが、血管は“老いる”だけではない。最新の研究では「努力次第で血管年齢は大幅に若返る」ことも証明された。米ボストン大学が3000人を対象に行った調査によれば適切な食生活や運動習慣を守り、引き締まった体形を維持すれば、加齢に伴う血管の老化を食い止められる可能性がある。一方、血管年齢を若く保つうえで、遺伝的な要因は生活習慣ほど大きく影響するわけではないという。同大学によれば、70才でも20代並みの血管年齢を保つことも可能だ。
◆ショッピングモールでも測定可能
体内の年齢だけでなく、これからかかる病気の可能性までも如実に表してくれる「血管年齢」だが、一体どのように測定したらいいのか。
「首と足の付け根、または上腕と足首にセンサーを付けて動脈の拍動を記録します。その時間差と距離から、脈波が動脈内を伝わってゆくスピードを算出します。血管年齢が高いほど、脈波が伝わるスピードも速くなるという仕組みです」(菅原さん)
2012年から保険適用となり、医療機関での診察に使われているほか、人間ドックなどでも測定可能だ。また、若干は精度が落ちるものの、指を差し込むだけで計測できる簡易的な測定器がショッピングモールなどに設置されている。家庭用のものも販売されており、2万数千円程度で購入することもできる。血圧を測るごとく、誰もが手軽に測定できる環境が整いつつある。
※女性セブン2019年2月28日号