国内

三波春夫の「お客様は神様です」をはき違えるクレーマー

悪質クレーマー対応でうつ病を患うオペーレーターも…

 テレビをつけても、ネットを見ても、はたまた電車の中やお店でも…何だか窮屈に感じたり、「そこまで必要!?」と思うような過剰サービスに遭遇したりすることが最近多いのではないだろうか。“和を以って貴しとなす”がわが国の美徳だったのに、見回せば不寛容や過干渉、過剰反応ばかり──。

 日本社会がギスギスし始めた背景には、誰でもすぐに苦情を言える環境が整ったことがあると、クレーム対応の専門家で『キューブ ルーツ』代表の津田卓也さんは言う。

「中でも影響が大きかったのがスマホの普及です。例えば、朝のラッシュ時に駅などで人身事故が発生して電車が遅れたとします。昔なら、駅に苦情の電話をしようと思えば公衆電話を探さねばならず、電話を見つけてかける頃には怒りは収まっていました。

 ところが今はスマホがあるため、ホームで電車が動くのを待ちながら、イライラしたまま電話ができるため、自然と口調もきつくなりやすいのです」(津田さん・以下同)

 人間の心理として、顔の見える相手より見えない人に対して攻撃性が増すため、対面よりも電話、さらにメールやネットの方が伝達に人間味が失われ、トゲトゲしやすい。

◆お客様なら何をしてもいいわけではない

「そもそも日本の鉄道は世界一正確です。なのに、ハイレベルな便利さが当たり前になりすぎた日本人は、少しの遅れも許せない。そして、企業側も顧客満足度をうたいすぎて、顧客の方が偉いと勘違いさせた面もあります。“お客様は神様です”という言葉も、お客はエラいんだから何をしてもいいと勘違いされがちですが、本来の意味はまったく違うんですから」

 演歌歌手・三波春夫のせりふとして知られる“お客様は神様です”という言葉は、“本来、聴衆であるお客様の前では、神前で祈るように澄み切った心で歌わなければ完璧な芸をお見せできない”というものだった。

「はき違えた『お客様は神様です』は社会全体で考え直し、企業は接客する社員にちゃんと断る基準を示し、店員などを組織として守るシステムを作るべきです」

◆孤独感が増加させるクレーマー予備軍

 今の日本は3000万人が心の病で苦しみ、WHOがイエローカードを出すほどだ。特に、2007年の団塊世代大量リタイア以降は、クレーマー予備軍も確実に増加していると、津田さんは言う。

「仕事一筋で人づきあいが下手な団塊世代の男性は、妻に先立たれたりすると、孤立しやすいんです。特に高学歴なシニアはプライドも高く知識もあるため、クレーマーになりやすい傾向にあります」

 今、日本人のメンタルは危機的状況にあるようだ。

※女性セブン2019年3月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン