東京大学史料編纂所教授の本郷和人氏
秦:昭和天皇も、敗戦直後は政治家や軍人の重鎮がいなくなったので、マッカーサーの占領軍が統治していた7年間は実質的な国のトップとしてわたりあいました。しかし占領が終わると、象徴の立場に戻った。権力の発動に関わらないのは、天皇にとっても救いでした。
本郷:いまは、その象徴としてのあり方についても議論があります。
秦:保守派の中には、「象徴らしくあまり動かず静かに祈っておられたほうがよい」という声がありますね。被災者と膝を折って話すとか、旧戦地を慰問するとか、そういうことに違和感を抱く人たちがいる。
本郷:公務ができないから生前退位したいという陛下に対して、「自分で公務をつくっているのに何をいってるんだ」という批判が出たのには驚きました。皇太子殿下が天皇になられたら、スタイルを大きく変えると思われますか?
秦:徐々に変わるでしょうね。すでに国際性を重視する自分なりのスタイルを築きつつありますから、文化外交のような公務が増えるかもしれません。大戦の遺族もほぼいなくなりましたから、戦跡訪問はなくなると思うんですよ。
本郷:将来的には皇位継承のことも大きな問題になります。男系男子のままで行くのかどうか。
秦:悠仁さままでは皇位継承者がいるので、まだそんなに慌てる必要はないという考え方もあるんですよ。ただ、まわりに同年代の皇族がいないのはお気の毒ですよね。僕は昔からの日本の旧家のしきたりにならい、養子を認めるという手法も考えたほうがいいんじゃないかと思います。
本郷:そうすると血がつながりませんよね? それとも血のつながりのある男性を養子にする?
秦:できればそのほうがいいでしょうが、これまでの血のつながりについても、科学的な観点からすると「絶対」はあり得ないでしょ。