引き出せる金額は〈口座残高×法定相続分〉の3分の1で計算され、上限は金融機関ごとに150万円だ。相続人が妻と2人の子供の場合、預金残高が900万円なら、妻は150万円、子供は1人あたり75万円までになるが、金融機関が複数あればそれぞれの口座から引き出せる。
「葬儀代やお布施は俺が親父の口座から下ろして払っておくよ」
そんなふうに長男が葬儀代を立て替えることも容易になる。注意が必要なのは、長男が引き出した預金は、その後の遺産分配で長男の相続分から差し引かれることだ。
「相続人の1人が葬儀費用などを立て替える場合、葬儀社の領収証をはじめ、役所に死亡届を出しに行くときの交通費、戸籍謄本などの取得にかかった印紙代など、経費の証拠を残しておくことが重要です。そうすれば、遺産分割協議でその金額は相続人全員で負担すべき経費だと主張できます」(犬山氏)
領収証がないと、“そんなにカネがかかったわけがない”と家族の無用なトラブルになりがちだ。新制度がかえって“争続”のタネになるリスクを知って、備えておきたい。
※週刊ポスト2019年3月8日号