ビジネス

海が身近な新都心「海浜幕張エリア」のマンションは買いか

千葉市美浜区の「幕張ベイタウン」(写真/時事通信フォト)

 1960年~70年代の高度経済成長期に続々と広大な住宅地が開発されたニュータウン。時は移ろい、現在では東京五輪を前に豊洲や有明(江東区)、勝どき、月島(中央区)といった「湾岸エリア」で大規模なマンション開発が行われ、ミニニュータウンが形成されつつあるのは周知の通りだが、同じ湾岸でも“海が身近な新都心”として開発が進んでいる場所もある。千葉市の「海浜幕張エリア」だ。しかし、住宅ジャーナリストの榊淳司氏は、「将来の資産価値を考えると不利な条件は多い」と指摘する。

 * * *
 私は首都圏の新築マンション市場をもう30年以上も観察しているが、数年に一度の割合で「えっ、その事業、本当にやるのですか……」と絶句するような計画がある。どう考えても需要がなさそうな場所とか、周辺エリアに競合するプロジェクトがひしめいていて、まるで「火中の栗を拾う」みたいな開発計画である。

 しかし、マンション業界では時々そういった唖然とするような事業が本当に行われる。いくつか例を上げよう。

 大きなところでは千葉ニュータウンの開発である。街開きが行われた1979年時点は、まだ日本経済に高度成長期の余韻があり、人口は増え続けていた。だから、その当時の判断は非難できない。

 しかし、1990年代に入ると少子高齢化や人口が減少する未来が見えてきた。また、千葉ニュータウンの立地があまりに都心から遠いことも現実的に認識され始めた。加えて、新たに敷設された鉄道の運賃が高いこともあって、次第に不人気化した。

 2000年代に入ると多くの開発業者が尻込みするエリアとなったが、UR都市機構があの手この手でマンション用地をデベロッパーに買わせる図式で、今も惰性的な開発が進んでいる。

 その街で育った世代が、新しい家族を伴って戻ってくる──これが街の世代交代である。中野、世田谷、杉並といった城西エリアでは比較的よくみられる現象だ。中央線沿線なら三鷹や吉祥寺でも、世代交代がよくみられる。

 しかし、1970年以降に開発されたニュータウンでは、あまりこの現象が見られない。比較的世代交代がよく行われているのは、大阪の千里ニュータウンではなかろうか。東京を代表する多摩ニュータウンでは、世代交代がほぼ見られないので住民は高齢化する一方だ。同時に街全体が老朽化している。

 住まい手の世代交代を大阪の千里ができて東京の多摩ができない理由は何か。それは都心との距離であろう。千里ニュータウンは梅田から30分弱。多摩ニュータウンは東京から50分以上。およそ倍近い。この差が大きく影響している。千葉ニュータウンは多摩よりも新しいが、都心からの距離感は遠い。したがって、千葉では多摩以上に世代交代が難しいだろう。

 そういう街で、これ以上マンション開発を続けるのは、将来の負の遺産を増やすことに他ならない。新規開発は凍結し、世代交代や新規流入を促進する手立てを考えるべきだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン