ビジネス

海が身近な新都心「海浜幕張エリア」のマンションは買いか

 ここ最近で、最も驚いたのは千葉市美浜区若葉というアドレスで着手された大規模な街づくりだ。計画戸数4507戸というから、ミニニュータウンと言っていい規模。この街もどうやら世代交代が難しそうな条件を備えている。その理由は大きく3つある。

 まず、都心から遠い。JRの京葉線が東京駅まで直通しているが、乗車時間が約40分。東京駅の最深部にホームが設けられているため、JRの他の路線へ乗り換える移動に10分以上はみておかなければならない。またこの条件が近未来に大きく好転するとは思えない。

 次に、最寄り駅である「海浜幕張」との距離だ。現時点で2物件が販売されているが、駅からの徒歩分数表示は「13分」と「15分」。この2物件には共にタワーマンションがある。つまりはエレベーターを利用する人がほとんどだろう。

 さらにいえば、「13分」も「15分」も、それぞれのマンションの敷地の端までの距離で計測されているはずだ。自宅を出て駅のホームに立つまで、20分以上かかっても不思議ではない。

 また、この2物件をあわせても計画全体の約3分の1。2027年度と2029年度に入居が始まる区画は「駅徒歩20分」の表示になる可能性もある。当然、何らかのバス運行が考えられるが、今の時代に徒歩16分以上やバス便のマンションというのは、資産価値評価においてかなりのハンディキャップだ。

 3番目の問題は、海浜幕張も含めた京葉エリア全体の供給過剰だ。そもそも、このエリアには広い土地が出やすい。だからこれまでも大量の新築マンションが供給されてきた。今もその流れは続いている。

 2019年2月中旬時点で総武線、京葉線、京成線、東葉高速鉄道の各沿線で販売されている200戸以上の大規模マンションの総戸数の合計を手元で計算すると4853戸になった。この他に200戸未満の分譲マンションも多数供給されている。

 これらのうちのほんの数物件以外、販売がスムーズに進んでいる様子は見られない。大半の物件が、建物の竣工までに販売が終わらない完成在庫となる。今後もよほどの販売不振にもならない限り、大規模マンションの開発が続くと予測できる。そうなった場合、この美浜区若葉で現在販売されているマンションの資産価値は10年後、20年後にどう評価されるのであろうか? 実は、この計画には参考となる先行事例がある。

 京葉線の線路を挟んだ南側には1995年に入居が始まり、これまで約9400戸が供給された幕張ベイタウンである。すでに街は完成形になっているが、数年前まで行われていた新築マンションの分譲は、とても好調とは言い難い状態だった。

 また、その中心部で借地権分譲された中庭型の住棟は一時大変な人気だったが、東日本大震災で海浜幕張駅周辺が激しく液状化して以来、資産価値は下落基調。最近でこそ都心バブルの影響があってやや戻しているが、数年前は約80平方メートルの中古物件が2000万円未満で取引されるケースが多く見られた。

 幕張ベイタウンの街は周辺環境も良く、住むには魅力的だ。最近では成熟の気配も濃厚にうかがえるようになった、日本では数少ない都市計画の成功例ともいえる。しかし、いかんせん世代交代が行われている様子は見えてこない。この街から巣立った若年層が回帰してこないのだ。その理由は、やはり交通利便性の弱さであろう。

 幕張ベイタウンといえども、いずれは多摩ニュータウンの歴史の軌跡を辿ってもおかしくない。もう一度液状化にでも見舞われれば、その速度をさらにはやめそうだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン